79.葛の花
「では、栞太を頼んだ」
「ええ、燧乎も、凍夜と大仙人様をお願いします」
「ああ。二人を仙界に連れ帰ったら、凛矢を迎えに行く。それまで、監視を頼む。気絶しているから、何も起こらんとは思うが」
燧乎は疲労困憊により金色のポメラニアンと化してしまった凍夜を片腕で抱えたまま、宙に浮く球体の水の牢に閉じ込められていた凛矢をラフレシアが居るここまで移動させて来たのだ。
凛矢の妖力、仙力を抑えている宝貝、雪だるまは無事であり、凛矢自身も水の牢に閉じ込められており、また、気絶もしているので、監視は必要ないかもしれないが、念の為にと、ここに残る姜芳が即座に対処できる距離に置いておく事にしたのだった。
「ええ。大丈夫です。念の為に、宝貝、万花衣を使用して、先程ラフレシアを眠らせた常緑低木の梔子を凛矢に囲っておきますから」
「ああ。では急いで戻ってくる」
「はい」
姜芳の宝貝、万花衣によって出現させた葛の花で二日酔いの治療を終えて、青白い顔は元の血色を取り戻したのだが、今度は心地よい眠りに就いてしまったようで、話しかけてもまったく起きない、瞼すら動かさない大仙人を俵抱きして、凍夜を片腕で胸に寄せて抱えて、燧乎は、宝貝、亀雲に乗り、仙界へと戻って行ったのであった。
「本当に燧乎と一緒に仙界に戻らなくていいのですか?栞太君」
姜芳は隣に立つ栞太を見下ろして尋ねれば、涙声ではあったものの泣き止んでいる栞太は、はいと力の入った返事をしたのであった。
(2024.4.7)




