66.無数の蔓
変異種のラフレシア。
環境がそうさせたのか。
何らかの理由により自らの意思でそうなったのか。
意図的に何者かに手を加えられてそうなったのか。
偶発的に何かを身体に取り込んでそうなったのか。
栞太が身体の中に入ったがゆえに、そうなったのか。
栞太が身体の中に入る前にすでに、そうなっていたのか。
栞太はラフレシアの中に、偶然入り込んだのか。
栞太はラフレシアの中に、意図して入り込んだのか。
意図して入り込んだとして、何が目的だったのか。
「あなたの宝貝、雪だるまを溶かすほどの異臭を通常のラフレシアが放てるわけがありません。何か、異変が起こったはず。救いは食虫植物ではない事。ウツボカズラのように消化液で獲物を溶かす可能性はない。つまり、ラフレシアの中に飛び込んで閉じ込められた栞太少年が殺される可能性はない」
「食虫、いや、食生植物に変異している可能性も考えられるよな?生きとし生けるものはすべて栄養。つまり、栞太という少年がすでに溶かされて殺されている可能性もある」
(責任を持ってあなたがどうにか栞太少年を救出しなさいと言いたい。けれど、言えない)
神経を逆なでしてくる凛矢に、往復ビンタをかましてやりたい、いやそんな事をしても無意味だ闘いだと狂喜乱舞させるだけだ。
姜芳は冷静に、冷静にと念じながら、解決方法を探し続けていた。
異臭が届かないこの場所で、望遠鏡を構えて観察しながら。
(栞太少年が居なかったら、一帯を禁止区域に指定して、弩九や人間界、妖怪界の研究者に解析を任せるんですけど)
ラフレシアの変異の理由解析にどれだけ時間がかかったとしても構わない。
けれど今は、栞太の救出が第一であるのだ。
(けれど、本当に、何が)
攻撃か、守護か、その双方か、はたまた別の理由か。
ラフレシアは無数の蔓を空に地にと這わせては、不気味に揺り動かしていた。
(何が、あなたの身に起こったのですか?)
(2024.4.3)




