61.秘密主義
大体が仙界の住民は秘密主義者であった。
例えば、遭難したり、事件事故に巻き込まれたりと、行方不明に陥る事態になった場合、弩九の開発した居場所を特定する追跡宝貝を仙界の全員が身に着けていれば、容易に捜索は可能となるのだが、秘密主義者であるがゆえに、また、その秘密主義を容認しているがゆえに、追跡宝貝を身に付けてはおらず、捜索が困難となるのである。
ただし、仙人になった者は自力での脱出が可能であると、本人も、また、周囲の者も判断しているがゆえに、追跡宝貝は不要であると考えていた。
そもそも行方不明になる事態はしょっちゅう起こるも、やはり須らく自力で帰ってきているので、追跡宝貝は不要、と考えるわけだ。
そのような危機的状況に陥った場合、自力での脱出が困難であると判断し、弩九に頼んで、追跡宝貝をもらい身に着けている、ほとんどの道士はその限りではないが。
そして、大仙人によって異世界から釣り出された栞太は、本人の意見を訊いてはいないが、仙界に居る人間であるがゆえに、追跡宝貝を身に付けさせられており、弩九に尋ねれば、栞太の居場所は容易に特定できるのであった。
「栞太も人間界に居るのか?」
「そうだ」
仙界の弩九の岩にて。
とりあえず凛矢の件は本人も居ない事から保留となって、仙桃宮での話し合いは終わりとなり、集まった者たちはそれぞれ仙桃宮を後にした。
小人のままの燧乎は弟子に迎えた栞太を連れ帰ってのち、姜芳の捜索にかかろうとしていた。
本来ならば、仙人でもある姜芳の捜索は不要ではないかとの意見も、仙桃宮の話し合いでちらほらと出ていたが、約束厳守の姜芳が期限とする一週間を過ぎても帰ってこなかった事が、どうにも引っかかった燧乎が捜索を申し出たのである。
「凛矢は何故、栞太を連れて人間界に下りたのか?」
「くく。知らないし興味もないがね。落とし前はきっちりつけてもらうよ」
「………弩九、殺すなよ」
「くく、く」
研究室を破壊された怒りと恨みは相当なものらしい。
燧乎は極悪極まりない表情を顔に刻ませた弩九にそう忠告するも、届いているのか甚だ疑問である。
(まあ、大丈夫、だ、ろうが)
弩九の制止役も必要だな。
人間界に下りる気満々の弩九を前に、誰を連れて行くか頭を悩ませる燧乎であった。
(2024.4.2)




