50.推測
(恐らく、荊は宝貝、夕灯を使って、この檻から瞬間移動したのだろう。行先は、荊が生まれ育った場所か、もしくは、荊をここまで誘導した來凱という盗人がどこぞへ連れ出したか)
人間界の闇競売が行われていた会場にて。
鍵も本体も何も破損していない檻を注視していた灼蛍は、顎に手を添えた。
鍵はかけられたまま。
つまり、來凱は鍵を開けなかった。
荊を檻から出そうとはせずに置き去りにしようとしたのだ。
(いや。來凱はただの盗人だ。鍵を自由に使える立場ではないばかりか、鍵の在り処も知らなかっただろう。檻に閉じ込められたままの荊に近づいて、ここから出て一緒に遊ぼう、と言えば、荊は喜んで宝貝、夕灯を使って檻から出て、檻の傍らに居た來凱を連れて、ここから瞬間移動して脱出した)
荊を育てた人間の楚の子孫である事。
荊が霊獣でもあり仙人だと知っている事。
荊が遊ぼうと言えば誰にでもついていくと知っている事。
心槍から來凱について聞いた話である。
(來凱が荊から宝貝、夕灯の存在を聞かされていたら、自由自在に瞬間移動できる事も知っている。か。荊は。話していそうだな)
警戒心というものがまるでなく、誰にでも懐いてついていってしまう。
危険な目に遭ったとしても、宝貝、夕灯がある上に、そもそも己の力で楽々と切り抜けられるので、仙界の者は誰も心配はしていないが。
(來凱と思う存分遊んだら、仙界に戻るだろうが。問題は、思う存分が、どれほどなのか。だな。來凱が、盗人ごっこだと言って、荊を盗みに加担させる可能性も、無きにしも非ず。栞太少年も呪いをかけられていると聞いた。早く仙界に戻すべきだな)
荊が生まれ育った場所はわからない。
誰にも知られないように、結界でもかけられているのだろう。
秘密の場所だと言って、誰も連れて行かなかったのだ。
そんな場所が一つや二つあっていいと、誰も尋ねはしなかったが。
(一度、仙界に戻って、弩九に、荊の居場所を尋ねるか)
(2024.3.28)




