44.潜入捜査
はてこれはどうした事か。
栞太は目を点にした。
(これは、自分から離れないでという意思表示。ではない、か。意識下での事か、無意識下での事か。わからないけど。わからないけどっ)
こんな、ふさっふわの尻尾でやわく抑えられて、行かないで、離れないでと意思表示をされて、離れられる輩が居ようか。
否。
「くぅぅぅん」
寒さに打ちひしがれた身体でお風呂に入った時に味わうような多幸感に包まれている。
こんな危機的状況なのに。
ふさっふさのもふっもふのやわっやわのほかっほかに包まれてはもう脱力するしかないってもんだ。寝るしかないってもんだ。
(って。いやいやいや!ダメでしょ!我を取り戻せ!ここから脱出しないと!)
やわく抑えているこの尻尾が本当に、離れないで、行かないでという意思表示だとして。
その心は何なのか。
ただ単に遊ぶ相手を減らしたくないだけなのか。
もしくは、
(本当は潜入捜査。というやつではないのか?この闇競売を解体させる為に。自らを囮にしてこの場所を見つけ出して。油断させておいて一気に捕縛するんだ)
そうだそうに違いない。
だって、仙界に居るんだもの只者ではないもの常識を遥かに超えた存在だもの。
(よし!なら俺は、おとなしくしているべきだよな!勝手にうろちょろして邪魔になるわけにはいかないし!)
栞太は少し浮かせていた身体を、荊の背中へと完全に預けたのであった。
(あったかい)
(2024.3.26)




