43.演劇の舞台
まるで演劇の舞台に立たされているようだ。
眠りから覚めて状況把握に努めていた栞太は思った。
薄暗い灯火に薄く照らされ、坂状に設置されている紅の超高級革張り椅子に座り、目元を仮面で隠した、人間、人間の姿、時々正体不明の生物が一心に見つめている。
目が痛むような、身を焦がすような眩い光が注がれている演劇を。
否。檻に収まっている競り落とす道具を。
競売ごっこだ。
そうはしゃぐ荊の背中に寝そべっている栞太は、真実そうであればいいと思ったが、違うと大きく強く警鐘音が頭の中で鳴り響く。
荊は仙界に居た。
つまりは、霊獣、仙人、道士のいずれかに違いない。
もし、修行中の道士だったなら、自力での脱出は困難だろうが、霊獣か仙人だったなら、その限りではない。
逃げよう。
栞太は這いつくばって荊の背中を移動して、辿り着いた耳元でそう言ってみるも、出てくるのは、か細い犬の鳴き声のみ。
同じ動物として言葉が通じないかとの期待を抱いてみるも、儚く散ってしまった。
(あばばばば。どうすればいいんだ。逃げないと。生きたままペットにされるならまだ希望はあるけど、競り落とされた途端、すぐに殺される可能性も無きにしも非ず。っていうか、俺は?ポメラニアンの俺はどうなるの?そもそも、俺はポメラニアンとして認識されているの?この虎の毛の一部って認識されているんじゃないかな?黒だし!っは!この檻の隙間。俺なら通れる。な。うん。楽勝で通れる。今のポメラニアンの俺なら通れる!よし!通って、助けを求めよう!誰に助けを求めるって?それはこの檻から出てから考える事だ!だってここ知り合い居ないし!警察とか市役所とかあるのかわからないし!)
栞太は寝そべっている荊の背中から降りようとした。
が、できなかった。
細長く柔らかい何かが、栞太を上からやわく押し付けて、動けなくさせているのだ。
すわ、宝貝、仙羽衣が今は動いては駄目だと伝えているのかと思いきや。違った。荊のふわっふわの尻尾だった。
(??????)
(2024.3.26)




