39.面倒
仙界の弩九の岩にて。
弩九に荊と栞太の居場所を教えてもらった、凍夜、震霆、燧乎は、荊が居るので行かなくても大丈夫だろうと言い合いつつも、とりあえず人間界に下りる事にしたのだが。
「燧乎一人で大丈夫です。あなたが行く必要はありません、凍夜」
「まあ、面倒くさいけど。あの子が仙界に連れて来られた原因は僕にもあるし。荊が居るから大丈夫だろうけど。万が一があったらいけないし」
「大仙人様が勝手に連れて来たのです。凍夜が責任を感じる必要は皆無。助けに行くのは、あの少年を弟子として迎え入れた燧乎だけで十分です。御釣りが来るくらいです」
「う~ん」
凍夜は腕を組んで首を傾げた。
震霆はいつもと変わらず淡々で単調な物言い、無感情な表情なのだが。
「何か怒ってる?震霆」
「別に怒ってはいません。あなたがあの少年にそこまで責任を負う必要はないと思って進言しているだけです」
「まあ。そうなんだけどさあ」
「歯切れが悪いですね。あなたは普段、そんなに他人に心を注がないですし、他人の為にあれやこれやと行動しようとはしないです。どうしてあの少年だけ違うのですか?」
「だから、責任を感じているからだって」
「ですから、責任を感じる必要はないと言っているではありませんか」
「もう。しょうがないでしょ。感じるんだから。しつこいよ、震霆」
「心配もしているのです。人間界にあなたが行けばどうなるか。わかるでしょう」
「わかってるけど」
「くく。新参の男にばっかり目を向けるな。と本当は言いたいのだろうに回りくどい事をしている」
「口を慎め、弩九。震霆は己の気持ちは誰も気づいていないと思っているんだからな」
「くく。安心しろ。恋の橋渡し役など死んでも御免だからな」
「いや。そこまでは言っておらんが。だがまあ。確かに珍しいよな。凍夜が栞太をあそこまで気遣い、行動に移そうとするのは」
「くく。本人も気づかぬ内に何とやら。というやつではないか?」
「まさか………なあ」
「くく、く。さてな」
少し離れたところから凍夜と震霆のやり取りを、弩九の横に立って見ていた燧乎は、そうだとしたら。と思った。
(大仙人様の腕と目は正しかった。という事にはなるが。ただ)
「面倒な事にしかならんな」
「くく。恋に面倒は付き物だ」
「弩九。あんた、なんやかんや言っているし、色恋沙汰の話、好きだろ?」
「くく、く。さてな」
(2024.3.24)




