34.荊
荊。
生まれた時から、人の手によって育てられた動物の虎。
大仙人により、霊獣の素質を見出されて、仙界へと飛翔。
霊獣になるべく努力を続けた。
育ててくれた人たちに褒めてもらう為に、喜んでもらう為に。
それはそれは一生懸命頑張って修行に励んだ。
その結果、霊獣へとなれた。
ばかりか、仙人への変化も可能となり、霊獣でもあり仙人でもある、仙界史上初の存在となったのだが。
本来好きだった遊びを修行中に封印していた反動だろうか。
霊獣として、仙人として、後進育成にも力を注がなければならなかったのだが、常に虎の姿で遊ぶようになってしまったのである。
そして。
霊獣でも仙人でも宝貝でも妖怪でも人間でも、遊んでくれるのならばどんな存在でも懐く性格であるがゆえに。
栞太が荊と秘密の場所で遊びたがっているよ。
そう、囁かれてしまえば。
「あ。おい!荊!」
荊は目の色を変えて、栞太を銜えて秘密の場所に連れ去ってしまうのだ。
「………確かに。危険、ではない、が」
すでに姿を消してしまった荊と栞太を制止する事ができなかった燧乎は、少しだけ思った。
栞太が身に着けている宝貝、仙羽衣の存在意義は何だろう。と。
確かに荊は危険ではないが。
危険ではないけれども。
連れ去るのを防いでくれてもよかったのではないか。
「いや。当然、油断していたあっしも悪いのだが。ううむ」
(2024.3.22)




