33.現状把握
「どうしたものか?」
仙桃宮の大食堂にて。
霊獣が居る時は窮屈に感じるそこは、今は霊獣がすべて出払っていて、とてもだだっ広く感じられた。
巨大な竹を切り出して創られた、長机に長椅子の組み合わせが三列並ぶ中、入口に近い場所で座って、注文した拉麺を待っていた燧乎は、長椅子に伏せって眠っている栞太と凍夜を見つめた。
漆黒のポメラニアンと、金色のポメラニアンになった二人を。
大仙人様は居ない。
紅鶴から聞かされて少しして、凍夜もポメラニアンになってしまったのだ。
九尾の妖狐とも相対していたのだ。
元々疲労を感じやすい凍夜が、ポメラニアン化するのは致し方ない事であった。
「これからどうしたものか?」
まず考えるべきは、栞太の現状把握と対策である。
凍夜は言った。
九尾の妖狐にかけられた呪いは、己のものとは違う。
凍夜は親しい者に癒されれば、仙人へと戻る。
では、栞太はどうすれば戻るのか。
凍夜と同じ呪いならば、異世界に戻して、親しい者に癒してもらえば。
(よい。わけがない。か)
栞太の世界の話は修行中に聞いていたが、仙界のように、摩訶不思議な力を使える仙人も霊獣も宝貝も妖怪も居ないらしい。
想像上の書物の中でのみ、これらは存在するとの事。
そんな世界で、人間がポメラニアンになったなどと伝えてところで信じられるわけがない。
否、もしも親しい者に癒してもらわなければ人間の姿に戻らないならば、何としてでも信じてもらう。のだが。
問題は、そうではない場合、である。
どのような目論見があるのか。
九尾の妖狐は栞太をこの世界に留めたがっているのだ。
では、呪いを解く方法も、仙界のみに留めているはず。
「まずは、現状把握。か」
仙桃宮の料理全般を担う、淡い桃色の球体の宝貝、料将が持って来てくれた拉麺をすすりながら、燧乎は弩九のところに行くかと考えたのであった。
(2024.3.22)




