30.糸目
凍夜を癒して、ポメラニアンから仙人に戻してほしい。
そう、唯一無二の相棒として大仙人に課せられた任務を強く胸に刻み、また、やる気満々の栞太は凍夜に、九尾の妖狐にポメラニアンになる呪いをかけられたと言われて少し間を置いて、雷に打たれたような衝撃を受けた。
閃いたのだ。
人間の姿よりも、ポメラニアンの姿の方が癒されるのではないか。
(そうだ、そうだよ!ポメラニアンの方が人間の姿の俺よりきっと癒されるはず!大仙人様!俺は任務を達成できます!)
栞太は手足を広げて、嬉々として凍夜を見つめた。
仙人の凍夜を見つめて、少し間を置いて思った。
仙人の凍夜を癒す必要があるのだろうか。
仙人に戻す為に、ポメラニアンになった凍夜を癒す必要があるのだが、すでに仙人の凍夜を癒す必要があるのだろうか。
疑問が浮かんで、少し考えて、結論を出した。
癒す必要はある。
そも、相手を癒す為には何が必要か。
信頼関係だ。
信頼関係を築く為には、交流を多く図る事が必要だ。
相手の事を深く労わる事が必要だ。
つまり、仙人だから癒す必要はないなど考えてはいけないのだ。
いつ何時でも癒すという気概が必要なのだ。
(大きく開いた目が血走ってる。怖い。怒ってるんだ。そりゃあそうか)
栞太の血走った目を、火柱が立つ勢いで燃え盛る目を、一身に受けた凍夜は糸目になってのち、ごめんねともう一度謝ったのであった。
(2024.3.20)




