狩り(狩られないとは言ってない)
アズさんを加え、パーティとなったぼく達は
話ながら平原を行く。
「なるほど、饅頭狼か。見たいような見たくないような…」
「あんころとずんだが出たら一体ずつ倒してモンスター図鑑開いてみてね!」
なんか、見てはいけない物を見せられそうになってる気がする。
まぁ、そういうのSANが減ろうが読んじゃうんだけどさ。
「東の平原も後々遊びに行こうかな。」
「そうした方がいいよ!」
そろそろウサギの出始めるエリアに差し掛かった。早速、首筋に感じ慣れてきた殺気を感じる。
「来るよっ!」
「え?何がっ……!?」
いきなりしゃがんだぼくにアズさんが驚く。
幸い今回はぼく狙いの一匹だけのようだ。
シュパンッ
空を斬る鋭い音が響く。
見上げればぼくの首のあった位置をウサギが飛んでる。
「エルっ!」
「了解っ!」
伸ばされた左腕がウサギの首根っこをひっ掴む。
これでこいつは無力化出来た。
「……こんな感じのウサギだから、首を斬り飛ばされないように気を付けてね!」
「は、はい……私の可愛いウサギさん像が…」
「後、今みたいな奇襲の場合…『エンカウント!辻斬ラビット!レベル差が大きい相手です、撤退を推奨します。』あ、出た出た。こんな風に後からエンカウント警告が出てくる事があるよ!」
「こんなの避けれ無いよ…」
「何度か斬り飛ばされればその内『あっ斬られる』みたいな感覚が分かるよ!」
「へ、へぇ~……」
「先に《《コイツ》》片付けちゃおう」
おもむろにぼくは槍を構えて、 慣れた動作で必殺の突きをウサギへ放つ。
『我駆道【クルミ割り人形】発動!』
「ピギュィィイイッ」
「相変わらず硬いなぁ。殺ることに違いはないんだけど。」
中空に固定したウサギに槍を突き込むのも慣れたものだ。
静かに《《してくれてる》》アズさんに声をかける。
「あ、そうだ。周りを警戒してくれると、とても助かります。何度かこの仕留める作業中に殺されたので…」
「わ、わかった!」
しばらく、ぼくがウサギをいたぶる音だけが平原に響いた。
ウサギの悲鳴が100と幾つかを越えた頃
「あっ…」
静かになった。
光りとともにウサギが消滅する。
「ふぅっ終わりました」
「お疲れ様です…」
心なしかアズさんの目から光が消えてる。なんでだろう?
「ウサギに会いに来てるのにウサギは可愛げが無いくらい狂暴だし、それを殺すラティは容赦がないから?」
「エル、情け容赦をかける方が殺しにきたウサギに失礼ってものだろう。」
「さいですか、ラティが一番狂暴でした」
エルと雑談しながら、思考を巡らせる。
せっかく二人いるんだからもっと効率良くやれる気がするのだ。
「アズさんも攻撃したいよね?」
アズさんは少し考えてから答える。
「見た目は可愛いウサギさんだし罪悪感はありそうだけど…待ってるだけも暇だよ。」
「それもそうか…次は二人で攻撃しよっか!」
「わかった!」
次の獲物を探して前に進む。
この、斬殺平原の地形は基本的に平坦な一本道だ。
雑草の生えてる道以外の場所に入ると流石に視界も悪く、ウサギのおやつとして一方的に切り刻まれるだけだろう。
道を進むこと少し、
ピョンと草むらからウサギが飛び出してくる。
「出た」
アズさんが溢した声に反応したのかこちらをキョロっとつぶらな瞳が見返して。
脚に力を溜めてる、角度から狙いがアズさんの方だと分かる。
放たれるタイミングさえ分かれば多少横に逸れてても捕まえられるっ
いつもより長めに伸ばしたエルを振りかぶり、アズさんの前へとかざした。
バシンッと豪速球がミットに刺さるような音を立ててウサギを捕獲する。
「いてっ」
ちょっとタイミングか、受ける位置が悪かったのか左手を少し斬られた。
エルはVIT(頑強)が高いから死ぬ程では無いが、包丁を手のひらで握ればこんな痛みって感じの痛みがある。
左の手のひらから《《赤い》》血が滴る。
「すまん、エル。遅かったかな?」
「いや、受ける位置が不味かった。痛みはお前の方にも伝わるし、こちらこそすまない。」
アズさんはいきなり跳んできたウサギに
驚いたのだろう、呆然としている。
「全く見えなかった…」
「ぼくもほぼ見えてないから、跳んでくる前にタイミングを合わせたらいいよ~」
「…なるほど?出来るかなぁ…」
そう言って彼女は腕を突き出したりしてるけど、このやり方はエルがいる前提なんだよなぁ…
腕を曲げ伸ばしする様がなんか、猫がじゃれてる姿と重なって可愛いから放っておいた。
さて、せっかく捕まえたし二人でなんとか攻撃してみよう。
「アズさん一緒に攻撃してみましょう!」
「わかった、やってみる」
アズさんは両刃のダガーで攻撃し始めた。
が、
「効かないよ!?硬い!」
銀に近いウサギの毛皮を滑るばかりで刃が通ってない。
「斬ろうとしちゃダメ!レベル差も有って毛皮には刃が通らない。刃に頼らずに殴り殺すような攻撃ならダメージが入るよ!」
さっき100回くらい槍でウサギを苛めて気付いた。
ぼくの槍でのダメージって多分、打撃攻撃も刺突攻撃と合算で入っている。
「わかった!よいしょっ!」
さっきの斬りつける攻撃から、
思い切り殴り付ける攻撃に変わった。
「ピグゥッ」
くぐもったウサギの悲鳴が聞こえる。
「よしっ! ダメージが入ってる!」
「OK!なら、二人で削ろう!」
アズさんも、殴り易い持ち方に変えて
ウサギを宙吊りにする。
「かけ声かけながらやろう!よいしょぉ!」
「はいっ! よいしょっ!」
「よいしょぉ!」
「よいしょっ!」
テンポ良く二人でウサギをいたぶる。
元気なかけ声と合間にウサギの悲鳴が、
麗らかな陽気に包まれた斬殺平原に木霊する。
スポ根だね!「悪魔崇拝かと」
左腕からなんかツッコまれたけど、気にしない!
「よいしょぉ!硬いとっ」
「よいしょっ!はい?」
「よいしょぉ!削るの楽しい!」
「よいしょっ!ですね!」
女の子と二人でウサギをど突く青春、良いじゃない!
「無いです」
これがキャッキャウフフか…
「こんな血生臭いキャッキャウフフがあるでしょうか?」
……「よいしょぉ!」
ツッコまれるので無心で突こう……
この時、ぼくはスポ根とツッコミで油断していた。
一瞬の油断が命取りになる、斬殺平原はそういう場所だ。
「よいしょぉ!……あれ?アズさん?」
返しの『よいしょ』が聞こえないから、左腕に吊るしたウサギを少し下ろしてアズさんが立ってた場所を見ると。
首が無くなったアズさんの遺体が転がっていた。
少しして光になって消えた。
「あ、夢中になりすぎたか」
血で濡れた耳の刃を見せ付けるようにして
アズさんのいた場所で2匹目のウサギが嗤っていた。
馬鹿にする様な、そのにやけ面にちょっとイラッとした瞬間。
シュパンッ
ゴトリ
しまった。姿を見せて嗤いかけたのは囮になる為か。
死に際の10秒間。地面に落ちた視界の中に小さなウサギの足が見える。
《《3匹目》》の存在に思い至った時、ぼくの意識は闇に溶けた。




