表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この木の下で君を待つ  作者: カル
13/18

特編 亜矢の世界

私の人生は灰色だ。

幼き頃から病気を罹患していた私の生活は病院で送るの事が殆どで、毎日繋がれる点滴、飲む大量の薬。

学校も行くことを許されず、病院内にある学習所で勉強をしていた。


でもそんな中、色が付く日もあった。

それは『あなた』と過ごす日々。


双子の妹と病院を抜け出して、あなたに会いに行っていた。


あなたの名前は水無瀬弓弦くん。

とても優しくて、かっこよくて、私の大好きな人。

弓弦くんと一緒に過ごした日々は本当に大切な時間だった。


あの日、私が川に落ちるまでは。


川に落ちた後はよく覚えていない。

ただ、目を覚ました頃、私の体はベッドに繋がれ、ここを離れる事を許してはくれなかった。

毎日お見舞いに来る妹はいつも監視されていて、罵倒されている事もあった。


「福音ちゃんごめんね、、、」


私は何度涙を流しただろう。

自分を支えてくれる妹を救えない自分の愚かさに悔しくて。

それでも福音ちゃんはいつも私に笑顔を向けてくれた。


「お姉ちゃん元気?」


福音ちゃんは笑顔で毎日そう言ってくれる。

それがどれ程私の支えとなっただろう。


私は決まって、福音ちゃんは?っと聞き返す。

福音ちゃんは笑顔を崩さず頷く。

でも私は知っている。


福音ちゃんはいつも無理をしたら涙を流すことを。

平気な顔してるけど、全然平気じゃなくて、人を思った行動をとる。

例え、自分が傷付こうと。

ガラスのような傷付きやすい心を、ヤスリに擦り付けても笑顔を向ける程、本当に優しい子だということを。


日はどんどん経って行った。

福音ちゃんは中学を卒業して、高校へ進学した。

私は医者の指示もあり、高校を諦めた。


どうせ分かっていた。

高校に行けないことくらい。

でもやっぱり苦しい。


私が知っているのはここの病院での生活と小さい頃弓弦くんと遊んだ思い出だけ。

悲しくはない、寂しくもない。

ただ、あの時、弓弦くんと遊んだあの時。

世界が色付いた時間が凄く幸せだったから、

この灰色の時間が凄く、苦しい。


そんな中入ったひとつの朗報。

体調が良くなりつつあった私は、日中の外出を許可されたのだ。


とても嬉しかった。

そして、とても怖かった。

またーー。

『灰色に戻る』事が。


だから私はこの町で有名な健康成就の木。

銀杏の木の下へ行った。


そこで『あなた』と再開した。

とても嬉しかった。

濃ゆく、色鮮やかに世界が塗りつぶされていく。

そして、私はまた体を壊した。

原因はよく分かっていない。

約半年間の外出禁止の時間は私の不安をよりいっそう大きくしていった。


約束の日が霞んでいくような気がしたから。


でも、あなたはそれでも、あの木の下で待っていてくれた。


とても胸が熱くなった。

初めての感覚、初めての衝動だった。


そして付き合って、デートをする。

デート中懐かしいお友達に会って、とても楽しかった。


そんな中唯一寂しかったのがあなたが私のことを覚えていなかったこと。

でも、それでも私は本当に、本当に幸せだった。


今思えば、私の外出が許可されてから福音ちゃんはお見舞いに来なくなった。

私はその事に気付かずに、ただ、あなたに夢中になっていた。


そして見た、弓弦くんが働く花屋で2人がキスをしている所を。


弓弦くんと事は信じている。でも、本当に悲しかった。

一人で泣いて、走って、そして、あの木のしたでひたすら泣いていた。


「亜矢?なにやってんの?」


泣いてる私に誰かが声をかけてくれた。

声のするほうを振り向いて、私はそれが誰かすぐに分かった。

颯天くんだ。


私はただひたすら泣きながら、颯天くんに悲しみをぶつけた。

ぶつけて、ぶつけて、泣き疲れた私に颯天くんはこう言った。


「亜矢、花火をしよう。」


今日は8月1日、花火をするにはたよちょうどいい季節だ。


「うん。」


颯天くんは私の声を聞いて、花火を持ってきてくれた。


「颯天くん、ありがとう。」


「気にすんな、結弦と早く仲直りしろよ。」


彼はそう言って、私を励ましてくれた。

私の気持ちに晴れ間が指した頃、あなたは私の前に立った。


あなたは私との記憶を思い出していた。

何故かは分からないけど、涙が流れていた。

その瞬間、栞で挟んだページを読み返すように、ある記憶が鮮明に頭に浮かんだ。

ゆーくんと結婚を誓った、幼き頃の1ページ。


ただ、ひたすらにその時の私は嬉しくて、嬉しくて、嬉しくて、、ゆーくんと抱きしめあった。

そしてーーー。

気付くと、私はベッドの上にいた。


また灰色の時間がやってくることに対して、悲しみという名のにがりを噛み締めて、起き上がった。


でも、私のその考えは間違っていた。

起き上がると、私の目の前にはあなたがいてくれた。


目の奥が、熱くなって、そして胸がキュッと苦しくなった。

灰色の世界に色が再び色が灯る。


「ゆーくん?」


私は本当にあなたがいるのか確かめたかった。


するとあなたは、「僕が君を幸せにするよ。」

真剣な眼差しでそういうあなたに対して、私はどんな表情をしたのだろう。


きっと、顔を赤らめて、満面の笑みを浮かべていたのだろう。

あぁーー。


本当に私はあなた、水無瀬弓弦くんが大好きです。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ