エピローグ1
あの後俺らは無事魔王城から脱出することができた。
魔王が生命を与え、忠誠を誓った者たちはこの世界から消え去り、この世界は平和に包まれたのだ。
結局モモナは元勇者アリーヴェデルに熱烈な愛情攻撃を放ち、魔女っ娘萌えなアリーヴェデルはその告白を心から受け止めた。
ちなみに17年間非リアを貫いた俺にも春が来た。
ポニーテールの可愛い女勇者さんは、魔王城最深部である魔王の部屋でもう一度俺に告白してくれたのだ。
――マコは何だかブツクタ言っていたが、一応これでめでたしめでたしなん
じゃ無いかな。
「信じらんない! こんな可憐な美少女マコが大好きって言ってるのに!」
「マコ。奴隷さんとあなたは歳が違いすぎるでしょう?」
ムーンに諭され何とか黙るマコ。
魔王も討伐したし、さて帰ろう!
と行きたいところだが――実はまだやることがある。
正しく言うと「やるべきことが新しく増えた」とでも言うべきか。
――数分前。
「う~ん……」
まさか魔王を倒した後で二度も気絶するとは思わなかったぜ……
「大丈夫? メロン君」
心配そうに声をかけてくれたルリは、可愛らしく「にへり」と笑った。
優しく俺の頭を撫で、そっと耳元で「メロン君のことを心から愛しておりますよ」と甘い吐息付きで放たれ、
俺は幸せのあまりもう一度気を失いかけた。
流石に三度目は無い。
ほら、仏の顔も三度までって言うだろ? 流石にラストシーンで主人公が三回も気絶したらアカンべな。
俺は人生で最も緊張して、紅潮して熱くなった顔を冷ます。
「お……おおお、俺もルリのことを――」
「大好きだ。モモナのことが」
元勇者の盛大な告白に邪魔されて俺の言葉はルリに届かなかったらしい。
だがルリは嬉しそうに目を細めると、俺の唇にもう一度自分のを重ねた。
「おめでとう!」
「おめでとうございます」
グラサンとsadakoの群れがまるで披露宴の参列者のように盛大に祝ってくれる。
普段なら邪魔だと感じる人数だったが、
祝福の言葉を受ける身としては多勢いるほうがやはり嬉しい。
「そうだ。勇者メロン様」
グラサンの一人が思い立ったように「ポン」と手を叩くと、
俺の前で片膝を立ててうやうやしく申した。
「私めが申すのもおこがましいことなのですが、実は私たちにも出会いの場を設けて欲しく……」
分かる。
分かるよ。
俺だって、もし自分以外の人たちがおめでとうムードに浸っているときに一人だったら寂しいもんな。
だがこれだけ多勢のグラサンに出会いなんてあるか……?
この世界に結婚相談所があるかは知らないが、前代未聞だが下手すると結婚相談所に予約の電話を入れなければならないかもしれないな。
「sadakoさんとの婚約をお許しいただきたく!」
グラサンはサングラスを外して普通のおじさんになり(だってグラサンじゃ
無いのにグラサンなんて呼ぶのおかしいだろ?)深々と頭を下げる。
俺はしばらく放心状態になり、
「sadako!?」
ツッコンだ。
盛大にツッコミました。
「sadakoと婚約?」
「私からもお願いを」
「私からも」
「私も」
「私」
「…………」
こうして魔王城最深部である魔王の部屋では、総勢数百人のsadakoとグラサンによる世界最大のお見合いが開始された。




