第6話:いよいよ開幕!荒武者たち立ちはだかる
2027年3月6日、東京ドーム。
超満員の観客が詰めかけたスタンドは、熱気と地鳴りのような歓声で大きく揺れていた。
ついに開幕を迎えた「ドリームチャンピオンシリーズ」第1戦。
熱狂に包まれるグラウンドとは対照的に、荒武者ジャパンのベンチ裏ロッカールームには、ピンと張り詰めた静寂が漂っていた。
「みんな、いよいよこの日が来た」
静かに口を開いたのは、指揮官の井草匡仁監督だ。選手たちの視線が一斉に集中する。
「相手はDWA――世界中から集まった超一流のスーパーハイブリッドチームだ。個々のパワーやスピードは間違いなく世界最高峰だろう。だが、我々には我々の野球がある。我々荒武者ジャパンには、主将という特定のリーダーはいない。ここにいる全員が主役であり、お互いの背中を守り、欠けたピースを埋め合う絆がある。自分たちの野球を信じ、令和の荒武者として、世界の怪物たちに真っ向から立ち向かっていこう!」
「……おうよっ!!」
力強い大歓声がロッカールームに響き渡る。
「よし、気合入ったぜ!」
角刈りの頭をガリッと掻きながら、黒のナイキのバックパックを棚に置いた銭形豹馬がニッと笑う。
「おはな、準備はいいか? ショートに飛んだ打球は全部任せたぜ!」
「当たり前じゃない、豹馬! 一球たりともレフトへ抜かせないわよ!」
ボーイッシュな髪を揺らし、猿飛英恵がグラブをポンと叩いて胸を張った。
◇
一方、熱気あふれる東京ドームの放送席。
「さあ! 全国一千万の野球ファンの皆様、お待たせいたしました! いよいよ『ドリームチャンピオンシリーズ』第1戦、東京ドームより生中継でお届けしてまいります!」
実況アナウンサーの熱い声に続いて、放送席の解説陣が口を開く。
「メイン解説の羽根さん、いよいよ始まりますね!」
「いやあ、素晴らしい雰囲気ですね」
元ジャパン監督の羽根達徳が、身を乗り出すようにグラウンドを見下ろす。
「選手たちの顔つきが実に引き締まっている。井草監督のもと、チームワークと集中力は最高潮に達していると感じますね」
「そして本日のゲスト解説は、惜しくも代表選考で銭形投手と競り合った広島東邦カーズの平松陽星投手です! 平松さん、ライバルの銭形投手の先発マウンドをどう見ますか?」
「……フン、銭形君には僕の分まで投げてもらわないと困りますからね」
メガネの奥の瞳を光らせ、平松陽星が無口ながらも強気な口調で答える。
「彼の『ジャガーボール』と『銭形ツーシーム』なら、DWAの怪物打者たち相手でも十分に打ち取れるはずです。打たれたら後でカミソリシュートの投げ方を説教してやりますよ」
「うふふ、平松さんらしいツンデレな応援ですね!」
特別ゲストの稲山亜実が華やかに笑う。
「私はやっぱり、ショートの守備に就く猿飛英恵さんに大注目です! 男子プロに混ざって正ショートを奪い取った彼女の『くノ一』みたいな神速の体捌き、早く見たくてワクワクが止まりません!」
そこへ、グラウンド脇からフィールドリポーターの牧野茉莉花の声が飛び込んできた。
『はい! こちらフィールドの牧野茉莉花です! グラウンドの熱気は本当に凄まじいです! 先ほどベンチから出てきた銭形投手と猿飛選手にお話を伺ったのですが、銭形投手は「DWAのバケモノどもを全員まとめてキリキリ舞いにしてやるぜ!」と頼もしいべらんめえ口調で話してくれました! 荒武者ジャパン、ベンチの雰囲気も最高です!』
「ありがとうございます、牧野さん! さあ、両チームのナインがグラウンドへと飛び出してまいります!」
審判の「プレイボール!」のコールが、東京ドームの天井へと吸い込まれていく。
令和の荒武者たちと、世界最高峰の怪物たちが織りなす「ドリームチャンピオンシリーズ」。
いま、伝説となる第1戦の火蓋が切られた――!
(第7話へ続く)




