第7話:豹馬、初回に牙を剥く
東京ドームの天井を突き抜けんばかりの大歓声の中、審判の「プレイボール!」のコールが響き渡った。
マウンド上に立つのは、荒武者ジャパンの先発・銭形豹馬。
剃り込みを入れた角刈りにニキビ面の面構えは、世界の怪物たちを前にしても微塵も怯む色を見せない。それどころか、口元には不敵で不遜な笑みさえ浮かんでいた。
「へっ……噂の超豪華打線ってやつか。どいつもこいつもデカい面しやがって……! この銭形豹馬のジャガーボールで、いきなりキリキリ舞いにしてやらぁ!」
バックネット裏や放送席、そしてベンチからチームメイトが見守る中、第1戦・表の DWA(夢の世界連合)の攻撃が始まった。
DWAの先頭打者は、1番・ライトのフォルナンド・タテスJr.。
メジャーを代表する超凄腕のファイターが、悠然と打席へと歩み寄る。
「初球から行くぜ!」
豹馬がサイドスローの軌道から腕を振る。
唸りを上げて放たれた初球は、外角高めへ猛烈な勢いで突き刺さる150km/hのストレート!
タテスJr.の鋭いスイングが空を切る――!
「おっと、いきなり150キロだ!」(放送席・羽根達徳の声)
どよめく観客席を尻目に、豹馬は続く2球目に変化球を選択した。
手元で鋭く横滑りする高速スイーパー――「ジャガーボール」だ。
魔術的な軌道にタテスJr.のバットが完全に詰まり、ボテボテのファーストゴロに打ち取られる。打球を処理した4番・達摩厳が落ち着いてベースを踏み、まずは1アウト。
「よっしゃ、ワンナウト! いいぞ豹馬!」
ベンチから井草監督や野手陣の威勢の良い声が飛ぶ。
続く2番は、俊足巧打の左打者ピート・クロウ=アーミー。
ここで豹馬は、インコースへ食い込む「銭形ツーシーム」を投じる。
バットの芯を完全に外されたクロウ=アーミーの打球は、高いバウンドを描いてセカンド方向へ。
「そこだ!」
打球の落下地点へ矢のように飛びついたのは、2番・セカンドの真木秀悟。素早く捕球すると、一塁へ正確な送球を送り、間一髪でアウトを奪う。これで早くも2アウト。
そして、東京ドームの空気が一段と張り詰めた。
打席には、DWAのキャプテンにして世界最高の巨砲、3番・レフトのアール・ジャージが向かう。
「……いよいよだな」
レフトの守備位置についている森島翔太や、ベンチの面々が固唾を呑んで見つめる。
ジャージが威圧感たっぷりに巨体を揺らし、バットを構える。その圧倒的なオーラに、通常の投手であれば気圧される場面だ。
だが、豹馬の闘志はむしろ燃え上がっていた。
(メジャーの本塁打王様よぉ……! 俺のこの腕から繰り出す軌道、生きて見切れるもんなら見切ってみな!)
豹馬が大きく足を上げ、鋭く腕を振る。
投じられたのは、この日一番のキレを誇る150km/hの高速スイーパー――「ジャガーボール」。
外角低めへのボールゾーンから鋭くストライクゾーンへと曲がり込む魔球に、ジャージの巨体が豪快にスイングを切る。
――ズバァンッ!!
「ストライク、バッターアウト!!」
捕手・若武健矢のミットが凄まじい音を立てて球を受け止める。
ジャージは信じられないといった表情で一度バットを見つめ、そして不敵に笑ってベンチへと引き返していった。
初回。
世界最高峰の怪物たちが並ぶDWAの上位打線を相手に、銭形豹馬は圧巻の三者凡退劇を演じてみせたのだ。
「見たか! これが俺の、日本の『荒武者』のピッチングだぜ!」
マウンド上でガッツポーズを叩きつけ、闘志を剥き出しにする豹馬。
大歓声に包まれる東京ドームを舞台に、荒武者ジャパンの熱い反撃の狼煙が、今まさに上がろうとしていた――。
(第8話へ続く)




