第23話:汗と涙のMVP、そして伝説の大打者からの祝福
東京ドームの熱気と歓声は、サヨナラ劇からしばらく経っても冷めやまなかった。
グラウンド中央に特設されたステージで、いよいよ栄誉ある表彰式と各種インタビューが始まる。
最初にマイクの前に立ったのは、荒武者ジャパンを世界一へと導いた智将・井草匡仁監督だ。インタビュアーから勝因を問われ、井草は穏やかな笑みを浮かべて語った。
「選手たちが信じられないほどの粘りと、最高のパフォーマンスを発揮してくれました。データや戦術を超えたところで、一人ひとりが自分の役割を完璧に全うしてくれた結果です。本当に、日本の誇りである最高の選手たちですよ」
そして、場内アナウンスとともにコールされたのは、今大会の主役にして最高の英雄――MVPを受賞した銭形豹馬だった。
ナインに背中を押されながらマイクの前に立った豹馬は、びしょ濡れのユニフォームのままで満面の笑みを弾けさせる。
「いやもう、最高の一言に尽きます! 前日の完全試合から今日の延長戦まで、身体はバキバキですけど、スタンドの声援と後ろの仲間たちが俺を引っ張ってくれました。応援してくれた皆さんと、最高の仲間たちに感謝しかありません!」
その言葉に、ドーム全体が割れんばかりの拍手と歓声で包まれる。
続く表彰式では、激闘を彩った名誉ある受賞者たちが次々と発表された。
今大会のMVPはもちろん、歴史的快投と劇的なサヨナラ弾を放った銭形豹馬。
敢闘賞には、第4戦で驚異のノーヒットノーランを達成し、圧倒的な球威で支え続けたDWA(夢の世界連合)のジェイ・マジオロウスキーが選ばれる。
さらに優秀選手賞には、最後まで勝負強さを発揮し続けた荒武者ジャパンの巨砲・達摩豪、広角に打ち分け最多安打を達成した伊達鷲一郎、そしてDWAの主軸として最後まで強烈なホームランを放ち続けたアール・ジャージの3名が選出された。
そして、ひときわ大きな歓声を集めた特別賞には、忍者のような神速の守備で幾度もチームを救い、第6戦では劇的なサヨナラスクイズをも決めた、荒武者ジャパンの紅一点・猿飛英恵が輝いた。
◇ ◇ ◇
その頃、東京都内の銭形家では――。
「やった……やったぞ豹馬ぁーーっ!!」
テレビ画面に映し出される弟の晴れ姿に、兄の龍馬が思わず大声を上げてガッツポーズを叩きつける。母・恵子や祖父母たちも、嬉し涙を拭いながらテレビに向かって温かい拍手を送り続けた。
隣の猿飛家でも、父・佐吉郎と母・恭子が「英恵も豹馬くんも、本当によくやったわね!」と手を取り合い、愛娘と甥の快挙を心から讃え合っていた。
◇ ◇ ◇
一方、歓喜に沸く東京ドームのベンチ裏通路。
仲間たちと喜びを分かち合っていた豹馬の前に、静かに歩み寄る一人の老紳士がいた。
その威厳と温かみを兼ね備えた佇まいに、まわりの選手たちが思わず息を呑み、道を空ける。
現・福岡ディスクバンクホークス取締役会長であり、かつて初代ジャパンを率いてWBC世界一(初代王座)を成し遂げた伝説の大打者――汪忠治その人であった。
「会長……!」
豹馬をはじめ、駆けつけた伊達や達摩兄弟、英恵たちが背筋を伸ばす。
汪忠治は穏やかな笑みを浮かべ、ゆっくりと歩み寄ると、豹馬の肩を優しく叩いた。
「素晴らしい戦いだった。君たちの野球には、日本の野球の魂がすべて詰まっていたよ。泥臭く、執念深く、そして何より見ていて胸が熱くなる試合だった」
伝説の大打者からの直接の賛辞に、豹馬は胸がいっぱいになり、深く頭を下げる。
「ありがとうございます……! あなたのような伝説の背中を少しでも追いかけたくて、俺たちはここまで走ってこられました!」
「いや、君たちはすでに、新たな伝説の扉を開けたのだよ」
汪忠治が温かい眼差しでナイン全体を見渡し、力強く言葉を続けた。
「世界一、おめでとう。君たちは日本の、そして世界の誇りだ」
レジェンドからの祝福の言葉が、荒武者たちの胸に深く、そして熱く刻み込まれていくのだった――。
(最終話へ続く)




