第22話:アッパレ豹馬!輝け荒武者たち!
延長10回裏、世界一をかけたドリームチャンピオンシリーズの最終局面。
東京ドームのざわめきが静まり返り、固唾を飲んでグラウンドへと視線が注がれる。DWAのマウンドに立つのは、孤高のサブマリン左腕「月の女神」ダイアナ・ムーンストーン。そして、そのマスクを被るのは、二卵性双生児の兄であり圧倒的なパワーを誇るアポロ・ムーンストーンだ。
「さあ、私たちの力を見せつけるわよ、アポロ!」
「ああ、ダイアナ。ここで抑えて、俺たちが世界一を掴むんだ!」
双子バッテリーの強い意志が重なり合う。
対する荒武者ジャパンの攻撃、先頭打者として打席に向かうのは4番・サードの達摩豪だ。
「ここで終わらせる男の執念、見せたる……!!」
ダイアナの投じた鋭いムーンライトボールを、豪が全身の力を込めて完璧に捉えた!
――ガキィィィンッ!!
鋭い打球はレフト線を深々と破るツーベースヒット! 執念の出塁を果たした豪の代走として、井草監督は俊足の切り札・滝川夏央を送り出す。
続く打席には、先ほどの守備から途中出場している周東佐京。ベンチのサインを確認した周東は、ダイアナの投球に寸分も狂うことなくバットを合わせ、三塁側へ完璧な送りバントを転がし遂げた!
『送りバント成功! 一死三塁、サヨナラのランナーが三塁に進みました! 歓喜の瞬間が目の前に迫っています!』
球場のボルテージが最高潮に達する中、ネクストバッターズサークルから静かに歩み出た男がいた。
背番号「17」、銭形豹馬。
直前の10回表をマウンドで完ぺきに抑えきったその足で、今度は打席へと向かう。豹馬のユニフォームのポケットには亡き父・平馬、そして、幼い頃から心の支えにしてきた、あの「ミスタープロ野球」永嶋茂夫の写真が入ったお守りがしっかりと握り締められていた。
(…父ちゃん、そしてミスター。俺に、最高の奇跡を起こさせてくれよ!)
マウンド上のダイアナが、闘志むき出しの鋭い視線を豹馬に向ける。
(豹馬……ここであなたを打ち取る!)
(来い、ダイアナ! 俺たちの意地を見せてやる!)
カウントは3ボール2ストライク。まさに息詰まるフルカウント。
ダイアナが投じた魔球ムーンライトボールは、内角低めへ鋭く沈みゆく――見逃せば間違いなくボール球だ。
だが、豹馬の身体は自然と反応していた。幼い頃から擦り切れるほど見返した、憧れのレジェンドの映像。その記憶と魂が、豹馬のバットを豪快かつ美しく一閃させる!
――キーィィィンッッ!!!
これ以上ないほどの完璧な快音が東京ドームの天井へと響き渡る。
白球は美しい弧を描きながら、そのままレフトスタンドのポール際へと吸い込まれていった――!
『いったぁぁぁぁーーーーーーっ!!!!!
打ったぁぁぁぁぁっ! サヨナラだ! サヨナラホームラン!!
エース・銭形豹馬、延長10回裏、自らのバットで劇的なサヨナラツーランホームラン!!7対5!
荒武者ジャパン、見事に世界一の栄冠を掴み取りましたぁぁぁ――っ!!』
瞬間、東京ドームの歓声は爆発的な咆哮へと変わった。
マウンド上のダイアナは、自らの手から放たれた打球の行方を見送り、その場に膝から崩れ落ちる。
「オーマイガー……。バット、ワンダホー……ヒョーマ……」
悔しさと、そして相手の凄まじい執念への敬意が入り混じり、ダイアナはマウンドに突っ伏したまま大粒の涙を流し続けた。
一方、ホームベース付近は歓喜の嵐に包まれていた。
サヨナラホームランを放った豹馬がダイヤモンドを一周してホームへ飛び込むと、待ち構えていたナインたちが一斉に飛び出し、もみくちゃになりながら抱き合う。
「豹馬ァァァーッ! やったぞお前!!」
「最高や、最高やで豹馬ぁ!!」
チームメイトたちから次々と手荒い祝福の水が浴びせられ、びしょ濡れになりながら豹馬は満面の笑みでガッツポーズを突き上げた。
そしてこの日先発の山下由伸が豹馬と握手を交わしながら
「ありがとう豹馬。俺も一昨年のワールドシリーズでは同じ様な立場だったけど、お前は自分で打って優勝を決めたから、やっぱり凄いよっ」
また、世界の二刀流・大滝翔平も
「銭形君、君こそ僕でも真似できないぐらいの真の二刀流だよ。また近い将来は海の向こうでも充分通用するよ」
とメジャー組の2人が褒め称えるのであった。
一方、興奮冷めやらぬ放送席でも、レジェンドやゲストたちが感極まった声を震わせる。
「いやぁ……参った! 降参です! 連日の完璧なピッチングからの、この劇的なサヨナラ弾……漫画でも描けない伝説のドラマですよ!」
メイン解説の羽根達徳が、興奮のあまり声を裏返させながら叫ぶ。
「ええ、お互いのプライドと執念がぶつかり合った、これ以上ない最高の一戦でした。勝者も敗者もありません、全員が日本の、そして世界の誇りです」
栗島秀樹も、目頭を押さえながら穏やかな笑みを浮かべた。
さらに、ゲスト解説席の平松陽星と藤堂弁慶も熱い言葉を絞り出す。
「僕たちもあの場に立ちたかった……だけど、あそこに立った銭形君は、本当に、僕たちの誇る最高の仲間です!」
平松が静かに涙を拭うと、巨体の弁慶が豪快に肩を震わせた。
「ハハッ、泣くなよ平松! だが、文句なしにアッパレだぜ銭形! 最高の夢を見せてもらったな!!」
そして、ひときわ大きな感動に包まれていた特別ゲストの稲山亜実は、両手で顔を覆いながら感涙にむせんでいた。
「もう、涙が止まりません……! 荒武者たちの執念と、豹馬君の最後の一振りに、心からの『アッパレ』を贈らせてください……!!」
日本野球の誇りと意地を世界に知らしめた、歴史的瞬間。
東京の夜空に、令和の荒武者たちの黄金の栄光が永遠に刻まれたのだった――!
(第23話へ続く)




