第14話:荒武者、崖っぷちに立たされる…
東京ドームでの熱狂的な初戦勝利から一転、荒武者ジャパンは残酷なまでの現実の壁に突き当たっていた。
同じく東京ドームで行われた第2戦。
先発マウンドを任されたのは、メジャーのロサンゼルス・ブルーソックスで絶対的エースとして君臨する右腕・山下由伸。気迫のこもった投球を見せるものの、DWAの強力打線はその一挙手一投足を完全に研究し尽くしていた。相手主砲アール・ジャージの痛烈な一発などで小刻みに点を奪われ、まさかの黒星を喫する。
そして舞台をDWAのホームである京セラドーム大阪に移して迎えた第3戦。
流れを変えるべく、投打の要である「二刀流」大滝翔平が先発マウンドに上がる。しかし、長旅の疲労か、あるいは世界の怪物たちの凄まじい執念か――中盤につかまり、まさかのKO降板。打線も相手継投陣の継ぎ目のない継前に沈黙し、これで痛恨の連敗となってしまう。
迎えた第4戦。同じく京セラドーム大阪の地で、なんとか流れを断ち切りたい荒武者ジャパンは、シカゴ・ベアーズの左腕・今長昇太を先発マウンドに送り出した。
対するDWAの先発は、桁外れの豪速球を誇る若き剛腕、ジェイ・マジオロウスキー。
「いくぞ、今度こそ俺たちが点を取ってやるからな!」
ベンチで伊達鷲一郎や真木秀悟が声を張り上げるが、マジオロウスキーの投げ込む160km/h超のストレートと鋭く落ちるフォークのコンビネーションは、荒武者打線のバットを完全に空転させた。
今長も粘りのピッチングで懸命に応戦し、ゼロ行進を続けるが――。
迎えた終盤の7回裏、DWAの強打者に甘いコースを捉えられ、痛恨の決勝点を献上してしまう。
そして9回表、最後の攻撃。荒武者ジャパンの打者たちは必死に食らいつくも、最後はマジオロウスキーの気迫のストレートにねじ伏せられ、ゲームセット。
――パァンッ!!
『ゲームセット……! ジェイ・マジオロウスキー、圧巻のエース級の投球! なんと荒武者ジャパン相手に、ノーヒットノーラン達成です!!』
京セラドーム大阪のどよめきと大歓声が遠ざかっていく。
スコアボードに刻まれた「0」の並びが、冷たく光っていた。まさかのノーヒットノーランという歴史的屈辱。
初戦の輝かしい勝利から一転、荒武者ジャパンは泥沼の3連敗を喫し、対戦成績「1勝3敗」という絶体絶命の崖っぷちに追い込まれたのだった。
試合後のロッカールームは、鉛のように重い空気に包まれていた。
誰もが言葉を失い、下を向いている。その中で、一人の男がひときわ深い絶望の表情を浮かべていた。
6番・ライトとして全試合スタメン出場を続けている、メジャー組の鈴江誠也だ。
開幕戦こそチームの勝利に貢献したものの、この第4戦までの4試合で、なんと「14打数ノーヒット」。この日のノーヒットノーランも含め、当たりが完全に止まり、チームの大きな足かせとなっていた。
「くそっ……俺さえ、俺さえ打てていれば……!」
自分のロッカーの前で、鈴江は悔しさのあまりバットを強く握りしめ、震えていた。
その様子を、監督室のドアの隙間から静かに見つめる男がいた。
荒武者ジャパン監督、井草匡仁。
智将として日米の修羅場をくぐり抜けてきた彼の顔には、苦渋の色が濃く滲んでいた。
(誠也の不振は深刻だな……。だが、ここでチームの歯車を噛み合わせ直すためには、非情な決断を下さなければならん)
翌日に控える、絶対に負けられない第5戦。
崖っぷちのチームを救うため、井草監督が静かに動き出す――!
(第15話へ続く)




