第13話:荒武者、初戦を飾る
スコアは8-3。
猿飛英恵の執念がもぎ取った満塁ランニングホームランにより、東京ドームは狂喜乱舞の渦に包まれた。ダイアナ・ムーンストーンをマウンドから引きずり下ろし、荒武者ジャパンは勝利へ大きく王手をかけた。
そして迎える8回表。
先発として7回を投げ抜いた銭形豹馬に代わり、ブルペンから背番号「1」の男がゆっくりとマウンドへ歩み寄る。
「あとは任せてください。しっかり抑えてきますよ」
マウンド上で豹馬とグータッチを交わしたのは、サンディエゴ・パラダイス所属の守護神左腕、松江裕樹。
メジャーの強打者たちを幾度となくキリキリ舞いさせてきた「小さな大魔神」が、気負うことなく淡々と投球練習を始める。
DWAの攻撃は上位打線から。しかし、松江の代名詞である「スプリット」とキレのあるストレートのコンビネーションに、メジャーのスター軍団すらタイミングが合わない。
代打で送られた強打者をも鋭い変化球で空振り三振に斬って取り、8回表を完璧な三者凡退のゼロに抑え込んでみせる!
「よし、完璧なリリーフだ!」
ベンチに戻る松江を、豹馬やナインが満面の笑みで出迎えた。
そして迎えた9回表、ファイナルイニング。
東京ドームのボルテージは最高潮に達し、球場全体が地鳴りのような大歓声に包まれる。
「いけぇ、最後を締めくくってこい!」
マウンドに上がったのは、荒武者ジャパンの最終要塞、背番号90・松島新也。
中京ドラゴンズで「令和の鉄腕」として君臨する剛腕が、気合の入った表情で巨体を微動だにさせず前を見据える。
DWAの執念の反撃も、松島の前には通用しない。
初球からミットを鳴らす150km/h後半の豪速球に、DWAの打者たちはバットを押し込まれる。最後は内角をえぐる凄まじいシュート回転の直球で詰まらせ、ボテボテのファーストゴロに打ち取った!
――パァンッ!!
「スリーアウトゲームセット!!」
球審の威勢の良いコールとともに、東京ドームの歓声が爆発した。
8-3。投打がかみ合った荒武者ジャパンが、世界の強豪・DWAを相手に堂々の初戦勝利をもぎ取ったのだ!
マウンドを中心にナインが歓喜の輪を作り、熱い抱擁を交わす。
見事な白星発進を決めた日本代表の興奮冷めやらぬ中、試合後のグラウンドには特設のお立ち台が用意されていた。
「それではこれより、歴史的な初戦を勝利で飾りました、荒武者ジャパンのヒーローインタビューを行います!」
球場アナウンスに呼ばれ、お立ち台に上がったのは二人――いや、三人だった。
指揮官である井草匡仁監督と、この試合で猛打を爆発させた達摩兄弟(兄・厳、弟・豪)の姿がある。
「まずは井草監督、見事な初戦勝利となりました。今の率直なお気持ちはいかがでしょうか?」
マイクを向けられた井草監督は、穏やかな笑みを浮かべつつも、鋭い眼光でスタンドを見渡した。
「いやぁ、選手たちがよくやってくれました。初戦という独特の緊張感の中、豹馬がゲームを作り、打線がつながり、中継ぎ陣も完璧に仕事をしてくれた。まさに全員野球の勝利です」
続いて、インタビュアーのマイクロホンががっしりとした巨体の二人に向く。
「そして打線で大爆発! この日2本のホームランを放った4番・達摩厳選手と、猛打賞の5番・達摩豪選手の兄弟です!」
兄・厳がマイクを受け取り、冷静沈着なトーンでありながらも関西弁訛りで答える。
「まあ、初戦やし絶対に負けられへんかったからな。自分のバッティングができて良かったです。……あ、次の試合も、こうして兄弟揃って打ちまくりますわ」
隣で豪快に笑っていた弟・豪が、すかさずマイクを横取りして関西弁全開でまくし立てる。
「何言うとんねん兄貴! 俺のほうが打球の勢いは凄かったやろ! いやホンマ、東京ドームのファンのみんなの声援がすごすぎて、テンション爆上がりやったわ! 次もウチらの豪快な一発で相手を木端微塵にしたるから、期待しといてや!」
豪の威勢の良すぎるコメントに、スタンドからは割れんばかりの爆笑と大歓声が沸き起こった。
世界最高峰の短期決戦「ドリームチャンピオンシリーズ」。
最高のスタートを切った荒武者ジャパンの快進撃は、まだ始まったばかり――!
(第14話へ続く)




