タイトル未定2026/05/24 01:24
嘉代はそのままタクシーで帰って行った私は2人も着いて行くように言ったがガンさんと裕二は私と残ると言うのだ、また3食を期待しているのかと思ったがそれは違った。
「薫よー、儂らお前に着いてく決めたんや、せやからお前の先生なら儂らにも先生や、その人に挨拶せーへんのは筋が通らん、なぁ裕二」
「そうですね、何事も最初が肝心、礼に始まり礼に終わる、ん?誰かそんな事言ってませんでした」
嘉代同様目頭が熱くなるのを覚えた、ガンさんはそんな私を見ると大木のような腕で私の首を抱え込むと
「とりあえず飯行こかぁー、薫の所為で喰い損なったさかいな」
「そうですね近くにモーニングやってる所ないかな?」
そう言うのだ結局食欲に勝る物はない2人だった、先生が目覚めるのは夕方である私は奮発して2人に鰻を御馳走すると告げると50過ぎたおっさんがヤッターと飛び上がって喜ぶのだ私は腹を抱えて笑った。
神田の鰻屋で贅を尽くし病院へ戻ったのは昼を回っていた夕方まで時間はまだあるとゲレンデ内で3人仮眠を取った、そう言えば押上で案件をこなしそのまま箱根へ行き都内へ戻る24時間眠っていないのだ、ほぼ気絶かと言う具合で眠りに落ちた結局2時間程仮眠をとると15:26に目覚めた。
「ガンさん、裕二さん行きましょうか」
深夜と違い院内は医師、看護師、外来患者、入院患者で溢れていた私達は許可を取ることもなく普通に病室へ向った、もしかしたらと無意識に足取りは早足になってゆく扉の取手を握ると大きく深呼吸をして静かに開いた、先生はまだ酸素マスクをして眠っておられた、嘉代の言葉がよぎったが今更信じるしかなかった私は先生の傍に椅子を持って行くとその時をじっと待った、がしかしやはり何もせず待つ事が出来ず5分と経たずに室内を歩き回っていた。
「薫さんが焦ってもしょうがないよ、兄貴みたくどんと構えないと」
ガンさんは長椅子に横たわり頬杖をつくとこちらを眺めている、どんと構えすぎだ私は裕二の言葉を無視するとウォーキングを続けた、と突然
「⋯あいも変わらず落ち着きがありませんね」
急な呼び掛けに下半身はウォーキングを続け上半身は声の主を見ようと無理な体勢になると足首を思い切り捻りその場に倒れ込んだ、その横を裕二とガンさんが通り過ぎてゆく、私も這いながらそれを追うとベッドに這い上がった。
「せっ先生、良かったぁ⋯」
ようやく這い上がったベットから私は力なくずり落ちて行った。
「私のいない間に随分賑やかになりましたね」
私は立ち上がろうとしたが下半身に力が入らない腰が抜けたのだ、情けなかったが私は女子座りで上半身だけ起こすとベッド上の先生と向かい合いこの状況を話そうとしたが2人は自らの素性を話し出した。
「先生、お初にお目に掛かります儂は巌龍一郎申します、こっちは舎弟の裕二言います、縁あって薫の世話になっとります以後お見知り置きを」
「これはこれは御丁寧なご挨拶痛み入ります」
先生は起き上がり挨拶を返そうとするも1ヶ月以上寝たきりで筋肉は弱りただ首を起こすのが精一杯、ガンさんは先生の背中に腕を回し起こしてやるのかと思いきや両脇を抱え持ち上げるのだ、私は両手を掲げさながら降臨する神を迎い入れるが如き格好になっていた裕二はそれを見て笑っていたがガンさんの先生に対する扱いが余りにも心配だっただけだ、ガンさんはそのまま先生をそっとベッドの上に降ろした。
「重ね重ね申し訳ない余計な手間が省けました、それではおふたり方、改めまして私高野山僧侶“慈照”と申します、留守中うちの弟子がお世話になったようで代わりまして御礼申し上げます、さて巌さん裕二さん初めてと申されましたがこれで三度目で御座いますよ」
そうだった先生がガンさん達に出逢うのは3回、3回?先生は確かに3回と言われたが今回と川崎で2回の筈であるが記憶が混濁されているのか私は敢えて訂正はしなかった。
「⋯あぁ、あん時かいな、あれ先生やったんかぁそりゃ堪忍やでぇ、せやけど先生がごっつ当ててきよるから思わず」
「いえいえ、私も未熟者で失礼致しました、ところであの時3人ほど童がおりましたが如何されましたか」
「おったおった、しつこー遊べせがむんで裕二に任せとったら夕方に『うちに帰ります』言うて消えよったで『なんやオバケかいな』言うて裕二と大笑いや」
「そうでしたか」
先生は手を合わせベッドの上で深々と頭を下げていた。




