タイトル未定2026/05/19 11:21
「巌、いい加減目を覚ませ」
海斗兄さんが兄貴の頬を叩く。
「んんんあぁぁぁ!何があった海斗っ!」
「初めまして巌君」
スーツの男が兄貴に歩み寄った、僕が『危ない』と声を掛ける前に兄貴の拳は男に向け放たれた、男に掛けたのではない兄貴に掛けたのだ、本当はさっき手を出さなかったんじゃない出せなかったんだ、この男に底知れぬ恐怖を感じたのだ兄貴より途轍もなく大きくて優しい恐怖を、兄貴の拳はまるで丸めて投げられた新聞紙の様に軽く受け止められた、兄貴からは初めて見る様な驚きの表情が漏れたそれでも兄貴は構わず二弾、三弾と拳を放つも男には届かない、今度は掴みに掛かったが躱され脊中を押されると地面へ突っ伏した、兄貴は暫く突っ伏していたがきかん坊の如く手足をバタつかせ咆哮をあげた。
「ほぉ、なかなかの逸材、地球人にしておくのが勿体無い」
兄貴は勝てぬと切替えたせめて一矢報いようと攻め続けたがいつしか夜は明け始めビルの屋上には朝日が差し込みそれに照らされた兄貴はゆっくり片膝をつき小刻みに肩で息をしていた、嘉代ねぇも途中で目を覚ましたが繰り広げられる一方的な闘いを見守るしかなかった。
「君はまだ若い、まだまだ伸びる逸材だ私の元へ来てみないか」
「⋯だぁとれボケェ、勝負はこれからじゃ」
「まぁそれも君の運命仕方ない、大人気ないが⋯」
目の前では凄惨な光景が繰り広げられていたが朝日に照らされそれは神々しくも見えた、そして兄貴は何もできずただ四肢をもがれ屋上を血で染め天を仰いでいた。
「あぁ負けや負けや、世の中は広いねんなぁ、裕二、後は頼んだで⋯」




