滝田 裕二
「兄貴、何か感じが違いますね」
「せやなぁ、昔を思い出せへんか?」
「なるほど、そういう事ですか」
「裕二、気ぃつけや来よるで」
兄貴が奴を完膚なきまでに殴り付けると周りの火災は消えていた、僕らにとっては取るに足らない問題だったがあのお姉さんには歓迎すべき事なのだろう少しは徳を積めたかも知れない、しかし火災が消えた途端、何やら新手の気配を感じ兄貴は薫さん達を遠ざけた、多分かなりの手練と感じ取ったのだろう無論、兄貴が負ける事はないのだが相手が手強くリミッターを解除せざる得ない場合、兄貴は見境がつかなくなりここら一帯は結局瓦礫と化すのだ僕でも身を守るのが精一杯で第三者を守る等できない、まして兄貴を止めるなど不可能なのである今は新手が兄貴の逆鱗に触れなければ良いと祈るばかりであった。
気配は校舎の方から感じるが何を勿体つけているのかなかなか姿を現さない、僕らに読み違いはない新手は必ずいる何処からか僕らを値踏みしているのだろう今の姿で値踏みなど怪我の元とも知らず、ほう、なるほどそれが狙いだったのか気付けば新手は奴を拳で穿っていた、奇襲ならば最も強い相手を削るのが定石であるが仲間をやり精神的ダメージを負わせる戦法であろうか、しかし奴は仲間でも何でもないのだが。
「……………………………………さて、」
「なにさらしとんじゃ!」
兄貴が吼えビリビリと空気が震える、兄貴の咆哮はいつもシビれる、兄貴について来てこれほど良かったと思える瞬間はないのだ、では僕の仕事をさせて貰いましょう、まずは二段突き、躱された、なるほどでは、後ろへ躱しますか、はっははそっちへ躱してはダメでしょう、背後では兄貴が回り込み拳を叩き込むとフラフラと間合いに入ってくる『終わりです』刃を上向きに喉元に突き立てた、ん?捻ると横に薙ぐ、あぁこれは違いますね。
「兄貴、ダメです」
「やったんちゃうんか?」
「んんー、なんて言うかな伽藍堂です」
喉元から首を薙いでも血の一滴も溢れてない、身体中にアルミ箔を貼った様な奇妙な相手は陶器製なのか肉の削ぎ落ちた首の中は空洞であった。
「……………………酷いですね、この火災の根源を駆逐して差し上げたと言うのにこの様な野蛮な事をされては、やはり地球人とはやはり野蛮な種族なのですね」
確かに火災の原因は紛れもなく奴ではあるが惚けるのも良い加減にして欲しいものだった、奴はコイツから操られていたのだ薫さんから聞いている奴は常世の住人、しかもなかなか位は高く決して現世に現れる事はないと言う無理矢理連れて来られ怒りに我を忘れていると、薫さんは常世に戻してあげましょうと言っていたのにコイツは役に立たぬと簡単に始末したのだ、薫さんは誰がやっているかまで把握してはいなかったがハッキリした、コイツを狩る。
「…………………では、私はこれにて」
「ちょっとまったりや、こっちの話は終わってへんで」
兄貴は上下関係にうるさい人だ、下の者には厳しく接する、であるから当然上に立つ者に関しては余計に厳しいのだ、コイツは詰みであった遣える者をいとも簡単に捨て去ったのだ、もし僕が奴であったならコイツが泣いて詫びるまで兄貴に叩きのめしてもらうのを願うだろう、僕も同じ気持ちだ、ん?何かおかしな事を言ったか、まぁいいコイツのお手並み拝見といこう、だが言っておくお前は僕らを知らないが僕らはお前を知っている。




