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元魔王の異世界冒険譚  作者: Undo
第二章 転生と出会い
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焚き火の前で 2

夜が深くなり、焚き火の灯りが心地よく揺れる。


ゆっくりした時間の中、2人の冒険者らが揚々と語り継ぐ。


「…でさぁ!いきなり入った横穴からオーガの群れ!?」

「えぇぇ!」

「でもぉ!俺は焦らず、背負ったこの相棒を振り被って、最初のオーガを頭から撫で斬りにした…からのぉ」

「うんうん」

「俺の一撃に怯んだオーガらを俺は見逃さなかった!そのまま一気に突っ込んで、一体、また一体と斬り伏せて…」 

「すごいねぇ!」

「いや、流石に盛りすぎ」


身振り手振りで武勇伝を誇らしげに語るアッシュに子どもらしくリアクションをしてやると、嬉しそうに続ける。

その様子を冷ややかな目で見守っていたエリスがついに口を挟んできた。


「なんだよぉ、今いいところなのに」

「いや、子どもに嘘はダメでしょ」

はて?数刻前の自分に言い聞かせているのかな?


「そもそも、オーガじゃなくてゴブリン。しかも慌てたあんたが、その剣抜いたはいいけど重くて満足に使えてなかったじゃない」

「運良くリーダーっぽいホブゴブリンの脳天にすっぽ抜けた剣が刺さって倒しただけじゃない」


つらつらと述べるエリスに指をシーッと静止するが、止まるわけもない。


「その後はいつも通りの泥沼展開。剣を取りに群れの中に入るはいいけど、頭目失って半狂乱のゴブ達と組んで外れての乱戦状態」

呆れた様子で話すエリス。

そこまで言って、胸を張って自らの武勇伝を語り出す。


「そこに、私が華麗に火球魔法と水球魔法を駆使してあんたを窮地から救って……」

「ブフッ!」

突然吹き出しだ相方に何よと抗議すると、


「何が華麗だよ、いつも通り火の玉が安定しないから、俺の髪がまた燃えるし、水玉だって消火のために出しただけじゃないか」

「ち、違いますー火ばっかり使ったら、悪い空気で倒れるから、水を使うほうが効果的だと思って…」

「へぇぇー?あんな鉄砲水の勢い出されて、洞窟で溺れ死ぬかと思ったぜ」

「それ言うならねぇ…」

微笑ましいやり取り。


楽しい団欒の中ではあったが、終わりそうにない。


「ねぇ、その剣はなんなの?」


喧騒中に一石を投じる。

指差したのは、アッシュが背中に背負う両手剣(ツヴァイヘンダー)

刃の根本に柄とは別の持ち手が施されている。

確か、両手で扱う時にこの部分を持つと安定して剣が振れるとかだったと思うが、特に特別な武器ではなかったはずだ。


これ?と剣をスラリと抜き、手に取って見せる。

「ふふふ、この剣に気がつくとは、見る目があるなバルザック!」

おもむろに剣を鞘から抜いて構えるアッシュ。

刀身は1メートルぐらいの諸刃作り。

なるほど、先ほどまで使っていた小剣とはものが違うようだ。


「この剣はなんと、自己修復の魔法石が着いた特別な剣なんだぜ!」

「自己修復?」


そうだと元気良く答えるアッシュ。

柄の真ん中に黄色い菱形の石があるのはわかった。

微かな魔力を感じるが、自己修復か。


「剣はすぐに刃こぼれするだろ?」

「でも、この剣は直れ!って念じると切れ味が直るんだよ」

「結構値が張ったけど、長い目で見れば武器の購入を抑えられるって寸法だ!」


ハハハッと誇らしげに語るアッシュ。


確かに武器は消耗品である。

手入れは欠かせない。


故に修理を自動で行えるのであれば、それなりの価値がある。

だが、駆け出しがそんな希少武器を手に入れられるものだろうか?


瞳に魔力を集めて見てみる。


確かに剣の宝石に魔力を感じるが、そこまで強力なものではない。

別のところにも青と赤の宝石があるが、こちらには何も感じない。


量産品ではないとはいえ、そこまで価値のある武器とは言えないと思うが…


「剣の魅了か…」

「ん?なんか言ったか?」

「ううん。何でもないよ」


思わず素が出てしまったな。


冒険者と剣。

使いやすい武器であることと、伝説に登場するのは剣を持った勇者だ。


剣が悪い訳ではない。

ただ、万能の武器なぞ何処にもないということを知っておかなればな…


「かっこいいね…んっ!」


わかりやすく褒めてやる。

と、同時に顔の前で両手を叩く。


その様子に2人の顔に?が浮かぶ。

「さっきから…ん!…虫がね…えいっ!」


何度か手を虚空で叩くも、仕留めきれなかった。


「うぅぅ…もうやだぁ…そうだアッシュ兄ちゃん剣貸してよ」

「剣?なんで?」

微笑ましい表情で見守るアッシュに腰の小剣をねだってみる。


「だって、剣ってなんでも斬れるんでしょ?」

「虫が嫌だから、剣でスパッと斬ったりしたいんだ」


俺様の提案に呆然とした後、2人がクスクスと笑いだす。

「なんで笑うの?」


「小虫を殺すのに剣なんていらないのよ」

「そうそう、さっきやってたみたいに手でこう、パチンって叩けば…」


そこまでアッシュが言って固まった。

「どうしたの?」


エリスが尋ねるも、固まったまま。

気がついてはいないかな?


では、

「……そっかぁ!剣で斬らなくても、叩いたりしても殺せるんだね!」


やってみる、とか言ってしばらく虫と格闘している様子を見せてやる。


「…そうだよエリス。剣だけじゃなくて殴っても相手は倒せるんだ」

「ん?そりゃそうじゃないの?たまにアンタ剣の腹で引っ叩いてるでしょ?」

「そうじゃなくって…だあぁ!言葉にできない!」


頭をガリガリと掻きむしるアッシュ。


まだまだ未熟だが、目の付け所はわかっただろう。


仕方ない、もう一つおまけしておいてやるか。


木のたもとにあった枝を取り、テンを軽く小突く。


その様子を見て、アッシュが叫んだ。


「打撃武器、棍棒とかならそもそも材質は木だし安い」

「叩いて相手を倒すことが普通だから、多少壊れても使い続けられる」

「それに、もしゴブリンとかに奪われても剣とかと違って、即死とかに繋がる可能性は低くなるんじゃないかな?」


はーっと感嘆の声を上げるエリス。


よくできました。

ただ、それだけだと50点だな。

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