焚き火の前で 1
バチバチバチッバチチッ
辺りはすっかり暗くなっていた。
畔道の少し外れにある開けた場所で焚き火が燃えている。
火の周りには、串を刺した川魚とキノコの串焼き、猪の魔物の肉を串に刺した物が並んでいた。
その出来上がりを今か今かと待ち侘びる。
炎の揺らぎと木が爆ぜる音、芳しい肉や脂の匂い。
生を感じながら、俺様とテン、アッシュ、エリスは思い思いの時間を過ごしていた。
「しっかし、今回の依頼。大成功ね!」
ニコニコと上機嫌のエリス。
採取素材を入れる袋を覗いてはほくそ笑んでいる。
「ホロニウムダケが6本、エールベリーが157個」
「他にも、ワイドボアの毛皮と牙と肉、月光甲虫の羽やらの素材がいくつか」
「ギルドへの納品数は50個。残りはギルドに卸すか、素材屋とかに売り飛ばせば……フヘ…フエヘヘッ」
「焼けたかなー?」
ブツブツと不気味な笑顔をと共に呟くエリス。
そんな相方を相手にせず、肉の焼き加減にご執心のアッシュ。
大収穫だったのだろうな…よかったよかった。
あれから俺様たちは、森に入ったの。
幸運なことに1時間もしない間にキノコ類は見つけることができた。
希少なキノコ、ホロニウムダケについては、群生とまでいかないが、10数本がまとまっている所を運良く発見したので、時間短縮になった。
ただ、そのまとまったホロニウムダケを全部持っていこうとする守銭奴魔法使いを説得するのが骨だったのは、良い思い出だ。
森の全部を狩り尽くす行為は、自らの首を絞める行為に繋がることをコンコンと説明したのだが、
「今死んだら意味ないじゃない!」
とても魂のこもった叫びだった。
自然と共生は大事なんだがな。
押し問答の中、飛び出してきた猪の魔物、ワイドボアが襲いかかってこなければ、取り尽くされてるいただろうな。
辛くも勝利し、肉をご相伴あずかるため、近くの小川で血抜きを施した。
解体は、駆け出しとはいえ冒険者。
手際よく皮を剥ぎ、肉を裂き、骨や牙など使えそうな物を選抜し、バラしていく。
俺様はというと、解体・血抜きを待つ間、テンと共に小川で川遊び…ではなく、テンを下流に目一杯広がり網のようにして追い込み漁。
釣果は…まぁボウズではないとダケ言っておく…
ある程度作業が終わり、満足いく結果になった時には、日が傾きかけていた。
夜の森をひた歩くメリットはないだろうと、満場一致で野営することとなり、現在に至るわけだ。
薪を集める中、虫や兎などの小型の魔物を適当に狩り、その素材も集めていたな。
なんでも、防具や家具のつなぎに使えるとかだ。
幸運に恵まれたものだ。
冒険者の逞しさたるや、どの世界でも同じだな。
「エリス〜バルザックが呆れてるぞ」
「な、何を言うのよ」
「素材見ながらニヤニヤしてたら俺でも引くよ。あとヨダレ拭けよ(笑)」
ばっと素材袋をマントに仕舞いつつ、口元を拭うエリス。
「いらんこと言わなくていいのよバカッシュ!」
やれやれ。
賑やかなことだ。
ただ、本当に嬉しそうだな。
おそらくほとんど成果が上がらなかったんだろうな。
それもそのはずだ。
先ほどワイドボアとの戦闘。
この2人の戦闘を一部始終見ていたが…まぁ酷かったなぁ。
まず、エリス。
火の魔法を使えるようで、一撃見舞ってやろうとした。
だが、
「いやァァァッっ!」
「エリス!強すぎる強すぎる!」
杖先で魔力を溜めて放とうとしたが、明らかにデカい火の塊が不安定にボボボと燃えていた。
制御をなくした火種が、アッシュの頭に燃え移っていた。
「あっチャー!水!水、ミズ!」
慌てふためく2人の間にワイドボアが突撃して、軽く2.3メートル吹っ飛ぶアッシュ。
次にアッシュ。
吹っ飛ばされたものの、流石戦士職。
すぐに体勢を整えて、小剣を携えボアに攻めかかる。
大振りに振り下ろす。
剣がボアの身体に触れ、真っ二つ…にはならず、剣先は皮膚と毛に阻まれたのだ。
「な、なんて硬いんだ!……まさか、変異種!?」
んな訳あるかい!
そんな数打ちの剣、しかも刃を研いでいないようでは、紙ですら切れるものか。
元々斬ることに特化していない小剣だしな。
その後、ボアに翻弄される、魔法が安定せず辺りを焼け野原にしようとするなど、同じような泥沼展開があった。
サッサと飯にしたかったので、テンにボアの討伐を命じた。
テンが身体を鞭状に捻ったのを見て、2人に身を屈めるよう伝え、タイミングを見てテンに指示。
放たれたテンの攻撃がボアを横一文字に斬断。
戦闘は終わり、あわや森林火災の元凶になることは防げたのだった。
さて、そうこう思いを伏せっている間にアッシュが串焼きを差し出してきた。
まずはボアの肉だ。
油がテカテカと光って宝石のようだ。
さてお味は……
「美味しい!」
思わず声が出た!
久しぶりの肉の味。
濃厚な血の味が鼻腔を襲うが、嫌な味わいではない。
むしろ、粗野で野生味のある風味は嫌いになれない。
色々な部位を串に刺しているかから、脂が満遍なく行き渡り、歯応えも変わっていい仕事をしている。
次にキノコ串。
なんと、甘い。面白い味だ。
カラフルな見た目で明らかに毒キノコだと思っていたが、赤いキノコは身が締まってシャキッとしているし、黄色いキノコはふわふわの綿菓子のように柔らかい。
熱を加えるとこのような味に変化するらしい。
うん。とてもいいな。
川魚は……小ぶりの魚だったので2人にやった。
少し食べ過ぎて、腹がいっぱいだったのもある。
緑色の小さいヤツだったが、魚自体が珍しいらしく、2人とも喜んでくれていたので、良しとしよう。
身が赤い魚なんてよく食えるな…
団欒の場がすすむ。
焚き火を囲み、穏やかな時間が進んでいた。
こういう時間もいいものだと思えるぐらいには、落ち着いてきたのだろう。
森に夜の帳が下りようとしていた。
さて、そろそろ動いてみせるかな…




