はじめてのともだち 1
「その子を離せ!」
背後から男の怒号が聞こえた。
視線を送ると、若い男が手に小振りの剣を構え、険しい顔で此方を見ていた。
歳の頃は15、6、背中に身の丈ほどの大剣を背負い、使い古された革の具足を身につけた赤髪の青年だった。
「待ってろ!今助けてやるから!!」
一気呵成に青年は手にした剣を振り上げる、此方に詰め寄ってくる。
「テン、やめよ」
応戦しようとするテンに小声で命ずる。
応戦することはない。
こんな足場の悪いところで、急に走ると……
「っととっ…うわっっ!!!」
言わんことはない。
見たところ手入れを怠った革の靴。
ぬかるみか木の根に足を取られ、一度は堪えたものの、そのまま顔から盛大に転んだ。
「くそぉ…」
「何やってんのよ、アッシュ」
鼻血を垂らし、涙目の青年の後ろから別の声が聞こえた。
声の主は若い女、歳の頃は青年と同じ15、6、所々に金銀糸の刺繍が施された深緑の外套を纏った金髪の女性。青い石が着いた長い杖を携えている。
見るからに戦士と魔法使いといった出立ちの2人。
身につける装備が古臭い。
手にした剣と杖は、良く言えば年季が入っているし、服には所々に繕った跡が見える。
身のこなしもまだまだ甘いな。
駆け出しの冒険者だな。
さて、
「いきなり飛び出してどうするのよ」
「でも、子どもがスライムに襲われて……」
アッシュと呼ばれた男が抵抗しようとするのを無視し、此方に視線を送る魔法使いの女。
「あれが?襲われてるって?」
呆れた様子でアッシュに問いかける。
それもそのはず、今の俺様はテンの上でうつ伏せになって2人を観察している。
テンは俺様を乗せた状態でプルプルと震えているだけ。
「あ、あれ?」
「アンタはねぇ…早とちりで飛び出すなっていっつも言ってるでしょ」
「で、でもエリス…あれスライム、魔物だし…」
2人の視線が俺様に注がられる。
さて、どうしたものか…
方や困惑と心配の表情、方や疑惑と警戒の表情を写している。
適当にやり過ごそうか…
いや…ここは…
「やめて!」
声を上げ、テンの頭からずり落ちるように、降りてみせる。
身体から地面に落ちたので、少し痛いな…
剣と杖を身構える2人。
立ち上がり、テンの前に立って両腕を広げて見せる。
「この子は、テンは悪いスライムじゃないよ」
「ボクの友だちなんだ、だから…苛めないで!」
少し涙目になって訴えてみせる。
冒険者の2人はポカンと口を開け呆けている。
やれやれ…小っ恥ずかしいが仕方ないか。




