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元魔王の異世界冒険譚  作者: Undo
第二章 転生と出会い
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第一歩

身体が震えている。


手足の感覚が曖昧だ。


視界が霞むり


転生して初めての会敵。


軟体の魔物スライムとの一戦に勝利したが、問題は深刻だった。


弱すぎる。

そして脆すぎる。


人の身体とはここまで脆かっただろうか?


能力の300分の1。

加えて、今のこの姿。


早めに限界値を見定めなければ、早々に詰むな…


フラフラする。

受肉する際の身体の指定もしておくべきだったか。


ん?

冷たいな


ふと、視線を地面に移す。


視線の先には、先ほどまで命のやり取りをしたスライムが、俺様の足元にその身を伸ばしていた。


命乞いか?

ふと足を動かそうとすると、一瞬で膝の高さまで身体を起こし足を包んできた。


スライムは、ギリギリと俺様の足を締め上げる。

が、すでに虫の息の状態。


わずかに圧力がかかっている感じで、ダメージにはならない。


だが、驚いたな。

この状態でまだ戦意を失わんか。


……あることが頭をよぎった。


「見事なり誇り高き闇の眷属よ」

プルッと震えるスライム。


「勇猛果敢な戦ぶりに加え、今際の時にも勝利を掴もうとする飽くなき戦意、天晴れである」

「しかし、汝の時、既に終わりの鐘が鳴り響かんとする」


そう、もうコイツに時間はない。

核を撃たれ、まもなくその身体は瓦解し、霧散する。


だが、

「口惜しいか!?生きたいか!?」

「なれば、選べ!」


「誇り高き死か、永劫の忠誠か」


震えるスライム。

足を締め上げる力が僅かに強くなった。


真っ直ぐにスライムを見つめる。

視線があった気がした。


しばらくの静寂。


その後、スライムが締め上げる力を緩め、地面に身体を広げ、核が顕になる。


委ねるということか……


では…

「その意気やよし」

「なれば、我が従属として永久の忠誠を誓え!」


スライムの意図は違うかもしれない。


だが、捨て去る命、拾うのも自由だろうよ。

今までもそうやってきた。


それに試したい事もあったしな。


右手の指を歯でなぞる。

僅かに切れた指先から、血が滲む。


血。

契約における最もポピュラーな媒体。

あまり使わない方がいいがな。


血は魔力の器。

双方に代償が大きいからだ。


特に大魔王たる過去を持つ俺様の血だと、効果はいかほどか…想像に難くないな。


それでも試したのには理由がある。


剥き出しの核に血を数滴垂す。


ひび割れた核がぼんやりと光った。


魔力が呼応しているようだ。


段々と光が強くなり、目を開けていられなくなるほどだ。


やりすぎたか?

このまま爆散したりしないよな?


瞬間、一際強い光を放つスライム。


閉じた目を超えて刺す光がなくなったのを確認し、目を開く。


目を疑った。


眼前には先ほどのスライムの二回りは大きい水色の楕円形のスライムがあった。

身体の奥にある核に紋様が刻まれているのが見えた。


成功だ。


従属の契約が成った。

実験も成功した。


先ほどから契約の魔法を使おうと思っていたが、発動しなかった。

先の戦いでもそうだ。


魔法発動ができないのは、魔力が封じられているのではと思っていた。

故に、血、魔力が宿る俺様の血を媒介にしてみたのだ。


結果はこのとおり。

魔力が封じられているわけではなさそうだ…


しかし、

「デカいな、コイツ…」


眼前には、ゆうに今の俺様の身体を越える大きさのスライム。

プルプル揺れて、コチラの様子を伺っている。


何か、求めている?


……あぁ「名前か」


魔物に名前はない。

個体名はあるが、特定の名を通常は持っていないものだ。


「スライムと呼ぶには風情がないしな。さて…」

改めてスライムを見る。


大きさは俺様の背丈の1.5倍ほどの楕円形。

半透明の水色に同系統色の濃い青の核が体内で不規則に動いている。


触って見ると、ひんやりして心地よい。

うん。気持ちいいな…


身体を預けてゆっくりしていると、スライムの体内に赤い斑点のようのものが浮かんでいるのに気がついた。


これは……血か?


契約の際に与えた血。


これが溶け込む前に身体に残ったのか。


………赤い斑点、赤点、斑ら……


「…テン…お前の名だ。これよりテンと名乗れ」


そう告げると、勢いよくプルプル震えるスライムことテン。


喜んでいるのだろう。


テンが身体を低くして俺様を乗せる。


ポンポン跳ねると身体が沈んで、テンの中には入れたりもした。


ひんやりしている。


今度はプルプル震える振動に身を委ねてみる。


なんとも心地よい。


上質のマッサージみたいだなぁ…


思いがけない旅の共ができた。

意外と前途揚々な旅路になるかもしれんな。


さて、この後はどこに……


「魔物め!その子を離せ!!」


なんと、また一悶着ありそうな予感がする…

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