表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔王の異世界冒険譚  作者: Undo
第二章 転生と出会い
PR
20/34

目覚めた先で

目覚めたのは森の中だった。


鬱蒼と茂る森林。

辺りは薄暗かったが、時折、木々の隙間から光が差した。


少し湿った空気が漂っているが、風が頬を撫でる感触が心地よい。

木々青臭ささ、土の匂いが鼻腔を刺激する。

五感が強烈に反応するのがわかる。

まだ身体に慣れていないか?


…生きている。

まさか、再び生を得るとはな…なんとも心地よい気分だな。

ただ……


「裸一貫とはよく言うが、文字通りだと困るな」


そう。

今の俺様は産まれたままの姿だった。

しかも、先ほどまで神たちの前にいた時の姿である。


神の御技があるなら、せめて服ぐらいサービスして欲しいものだったがな。


これも、制約か?

いや、アイツの嫌がらせだな、多分。


幸い、気温は高いと思う。

日差しもあるから凍える心配もないだろう。


地面を観察してみる。


「全くの獣道ではないな…」


獣ではない者が踏み荒らしたであろう痕跡があった。


痕跡があるのであれば、何かあるということだろう。


ではとりあえず、痕跡を追って探してみるか。


道中に出るは人か、それ以外か。


森林をあてもなく歩を進める。


今の身体が小柄であるからか、草を掻き分け進むのが少々難儀する。


途中拾った長めの木の枝を手に、薮の中を進み続ける。


錆びた剣が刺さった大木。


木々のたもとに無数の爪痕。


何かを引きずったような跡。


朽ちた馬車の中には古い鎧や割れた壺なんかがあった。


服の類いはなかったが、まだマシなボロ布を貫頭衣として着てみた。

穴が空いて、痒い。

ヘスティアみたいな格好だが、裸よりはマシだな。


しばらして薮を出ると、街道と言うにはお粗末だが、雑草や岩が取り除かれた、踏み平した道にでた。


「この道に沿えば、人里にでられるか?」


呟いてみるも答える者はいない。

うん、少し暇になってきたな。


道中、木の実や果実を口にしていたので、空腹と喉の渇きはそれほどであるが、1人延々と歩いているのは流石に暇だな。


鳥や小動物、虫なんかはいるが、それ以外の気配がない。

この道を行って、人里に出たいものだが…

「さて?右か、左か……!?」


進路を検討している最中、急に辺りが薄暗くなる。


見上げると、半透明の膜が頭上に広がり、今にも落ちてくる寸前だった。


「くっ!」


息を洩らし、転がるように前方へて回避を試みる。

バフゥッッ!!と膜は地面に着地し、土埃を巻き上げる。


なんとか、回避できた。


が、ほぼ裸みたいな格好で剥き出しの地面に転がるものではないな。

ボロが破けた……背中や膝に血が滲んだわ。


直ぐに立ち、落下してきたモノに正対する。


土埃が晴れ、姿を現したのは、半透明の水色に楕円形のフォルムだった。


こちらの世界でなんと呼ばれているかは知らんが、おそらく魔物。

生きとし生けるものの天敵。


スライムだ。

プルプルとした流動的フォルムは前世にもいたポピュラーな魔物だ。


プルプルと小刻みに震えながら、俺様の様子を伺っている。

大した装備もない状態。


戦う利もあまりないな、戦略的撤退を…

と思案していた次の瞬間、


ビュッッ!


眼前スライムが、身体の一部を棒のように細く絞って、こちらに向かい、何かを飛ばしてきた。


突然のことだったが、余裕で見えている。


飛ばしたのは、水と岩の飛礫。

真っ直ぐに、額を狙っていた。


中々の速度であるが、相手が悪いな。

体を捻って飛来する水弾と瓦礫を避けた。


……はずだった。


パンッと水が弾ける音。

同時に左肩に強烈な衝撃が走った。


「ッ!!」


衝撃が予想以上に強く、そのまま吹っ飛ばされた。


突然の衝撃で言葉を失う。


何故だ…この程度の技で…


水弾に吹っ飛ばされたことで、瓦礫の弾は当たらなくて済んだものの、痛みは残った。


見えていた。

弾の軌道、速度、粗方の威力。

その全てを理解した上で、避けたはずだった。


しかし、実際は身体が反応しきれなかったのだ。


なるほど。

これが能力の減退の効果か…


300分の1の減退。


魔王時代なら欠伸をしながら受け止めていた一撃。


今は吹っ飛ぶのか……


どんなものかと思っていたが、これほどとはな…


身体を起こして敵を見る。


変わらずプルプルと小刻みに揺れているが、心なしか揺れが激しい。

喜んでいるか、興奮しているのか。


なんとも、情けない。

俺様ともあろうものが。


では、この汚名注ぐには派手な一発でお返ししてやろうではないか。


右手を前に、意識を集中させる。

内なら命の脈動とは別の鼓動を逆流させ、超常を具現させる――


「爆ぜろ!」


…放たれた『力ある言葉』だけが宙にこだました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ