表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
元魔王の異世界冒険譚  作者: Undo
第一章 魔王と神と儀式と
PR
19/34

人として、神として

「あれ?もしかして、照れてる?」


思いがけない反応に対し、言葉を詰まらせてしまった姿を見て、目を輝かせるヘスティア。


「ちがう……」

「え―?もしかしてお礼言われ慣れてないとか?」

「……」

「あ、図星―?なーんだ結構かわいいところが…っていたい痛い痛い!」


意外と顔が小さいんだな。

もう少し力を入れれば静かになるか…


「ごめんごめん!ごめんなさいー!もう言いませんから―調子乗りましたぁ!」

柄にもなく困惑してしまった。

全く、俺様もまだまだだな。


「で」

「で?」

「もう時間もないぞ」

茶番に時間を取られた。

もう幾許もないだろう


「そうだね」

元気いっぱいに答える我が君。

よし、ではどんな力にしてもらうか…


「名前を教えて!」


ゴッと鈍い音がした。

俺様の手刀が我が君の脳天を直撃した音だった。


()()()()()!そう言ったはずだが」

「さっさとどんな力を付与するか考えろ!」

「時間がない上に、2つもお前が考えんといかんのだぞ!」


頭を抱えて唸る駄女神に詰め寄る。

「で、でも」

「まだキミの名前を聞いてなかったから」

コイツは…この期に及んでまたそんな事に拘っているか


……そうか、名乗ってなかったか…

面倒くさいなコイツ。


「名前か。どちらだ…」

え?と聞き返す駄女神にもう一度問う。


「魔王の名か?人の名か?」


目が合った。

一瞬考えるヘスティア。

そして


「人の名前」


ふぅっと思わずため息がこぼれる。

無自覚に人の深いところを刺してくる。


本当に面倒くさいな…


「バルザック」


ぽつりと言葉が溢れた。


ヘスティアは、溢れ落ちた単語を反芻するようにブツブツと繰り返す。


そして、今まで以上に瞳を爛々とさせて顔を覗き込んでくる。


「バルザック…いい名前…でも」

フッと表情が曇る。


「大変だったんだね…」

一言だったが、それが何を意味するかは即座に理解できた。


真名で俺様を見たか…

これまでの魂に刻まれた記憶の残滓を。


不思議と不快ではなかった。


だが、ヘスティアは違ったらしい。


怯え?


違うな。


後悔か。

懺悔の念か。


……分かりやすい奴だ。


「おい…」

言葉をかけると同時に、身体が発光してきた。


クソ。

もう時間切れか。


異変に気がついたヘスティアが悲痛な面持ちでこちらを見る。


なんだ?


視線?

他にも見られている?


「バルザッ…」


今にも泣きそうな声音を上げようとするヘスティア。


違う…

そうじゃない…


声はかけられない。

それでは意味がないだろう。


あらん限りの力で、睨みつけてやる。

驚いた顔を見せるヘスティア。


一瞬の逡巡。


我が君は一度顔を伏せ、その後――


「我が忠実なる信徒よ」

「此度の儀式の運び、誠に大義である」

「しかし、足りぬ!」

顔を上げた。



「しからば、この神々の遊戯(ラグナフェス)、最大の戦果を持って我が信徒の範を示せ!」

「我ら再び相見えるは、神の頂であると心得よ!!」


……とてもよくできました。


そうだ。

この道に慰めなどいらん。


同情も、憐憫も必要ない。


傲慢に。

強欲に。


全てを欲するが如く立ち振る舞わなければいけない。


この僅かな時で、随分と神様らしくなったでないか。


で、あれば――


「我が君の御心のままに……」


恭しく頭を垂れ、それだけを告げる。


身体が光に包まれた。


「待って…!」

消えいる俺様を見て、表情が戻る。


我が君が何かを叫んでいる。


「マト……モノ……!」


ま、と……もの?


遠ざかる声は途切れ途切れで、意味までは拾えない。


何を言っている?


問い返そうとした瞬間、視界が白く弾けた。


音が消える。


光も消える。


意識が、深い闇へ沈んでいく。


◇ ◇ ◇


冷たい……


頬に触れる、冷たい感触。


鼻腔をくすぐる土と草の匂い。


木々が風に擦れる音。


ゆっくりと瞼を開く。


木漏れ日差す森の中だった。


身を纏うものはなく、辺りに人の気配はしない。


さて…前途多難な人生を謳歌させてもらうとするか。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ