魔王の交渉2
「痛いところをつくね〜魔王殿」
軽口を叩くギルベルト。
言葉通りには受け取れんな。
全く焦った様子がないのが目に見えてわかる。
「そうだろう?で、あるならば…」
「でも!」
遮る言葉が妙に力強い。
思わず言い淀んでしまう。
俺様が?
「決まりは決まり。決定するのはこちら側だよ」
それが、大前提と笑顔でバツ印を作るギルベルト。
「こちらとしては決まりどおり、与えるのはヘスティアの加護と特殊能力を一つ、あと前世の能力値の10000分の1にすることが条件だね」
は?
なんと言った?コイツ。
「これでいいなら、遊戯を今すぐにでも始める事を認めようじゃないか」
「神のお言葉さ、さぁどうかな?」
ふざけているのか?
いや、コイツは終始ふざけた態度だった。
だが、何故だ?
言葉が出ん!?
思考が纏まらん
?なんだ?
視界が
…ゆれ、る…
…そこまで悪い条件であるか?
神が…譲歩……し…たの………では…いいてか…………
己の拳を顔面に突き刺す。
骨の軋む音。
鈍い衝撃。
視界が一瞬だけ白く弾ける。
……戻った。
頭のモヤが吹っ飛んだ気分だ。
「ありゃ?気がついた?」
うすら笑いを帯びるギルベルト。
久しぶりに殺意が湧いたぞ。
「随分と姑息な手を使うものだな」
「それはお互い様でしょう」
幻惑の術の類か
そこらの術師とは比べ物にならんものだが、なんとかなったな。
しかし、全く腹が立つ。
やり方が似ている。
神らしくないやり方を好む。
仲間をやられた意趣返しとは律儀なものだ。
たわいのない術合戦は引き分けに終わったが、そんなことよりも、
「ふざけた事を言うなよ、加護の件もだが、能力10000分の1だと」
そうだよと答えるギルベルト。
「君、強すぎるからさ」
「他の選定者とおんなじ、10分の1だと話にならないんだよね」
「特に、魔力値とか10000分の1でも足りないぐらいだよ」
ひらひらと手を振るギルベルト。
高すぎる能力が裏目に出るとは…
「馬鹿な事を言うな、10000分の1だとすると生命力や筋力はどうなる」
「自ら立って歩くことも、小石に躓いただけで死んでしまうわ」
俺様の抗議に、それもそうかと空を見上げる。
他の神に目配せした後、
「じゃあどういうのがお望みかい」
「能力値は10分1」
ギルベルトの笑みが消える。
「それだけ?」
「神の加護はいらん。」
六眼の神が視線を上げる。
「まだある。」
「付与される能力は三つ。」
六眼の神を見るギルベルト。
ため息混じりに頷くのを見て、天を仰ぐ。
「本気で言ってるね」
「君に有利すぎる」
「それが何か」
気にせず言葉を紡ぐ。
「300年停滞した現状」
三神の視線が集まる。
「転機を望んだのは貴様らではないか」
「そちらにも利があると思うが?」
三神は語らない。
が、葛藤するのはわかる。
神は停滞を嫌う。
永久の時間に生きる者の性だからな
それに、ここは強気でなければならない。
嘘はつけないからな。
あの女神?の権能は厄介だからな。
「魔王殿は欲深いね」
「安い挑発だな」
手で口を覆い一瞬の思案。
「加護を無くすことはできないよ」
「君がヘスティアの使徒としての証だからね」
「これがなければ、正式な判定ができない」
「これが受けられないなら話は終わりだよ」
いいねとその場にいる者らに告げる。
不本意だが、仕方ない。
ここからが、本番だ――――




