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~新説 「八軒流道具屋」~

「亀吉、『道具屋』っちゅう落語を知ってるか? 素人が泥棒市で仕入れたガラクタを並べて、客に散々からかわれるっちゅう情けない話。木製の雛人形を『首が動かん』と言われて『これなら寝違えなくてええ』なんて、苦しい言い訳をする。……けど、わしに言わせれば、言い訳をするようじゃ二流。本物の商売人は、ガラクタどころか『ただの棒切れ』さえも、なくてはならん宝に化けさせてこそ本物。


「おぅ 今日はそこで蚤の市がやってるから 亀よ


そこでうちの店の宝を売りに行って来い」


「叔父貴、こんなガラクタばかり本当に売れるのかい? ほら、この包丁なんかさやが錆び付いて刃がちっとも抜けないのに、つかの方だけスポッと抜けちゃうよ。それに、この『火吹き竹』だって……これ、ただの竹の棒じゃないか! ふしが抜けてないから、吹いても空気が通らないよ。こんなのゴミじゃないか!」


亀吉が、店から持たされたガラクタの山を見て、情けない声を上げています。店主は、鼻先で笑いながら団扇うちわを扇ぎました。


「亀、おまはんは相変わらず表面うわっつらだけやな。道具の良し悪しなんてのは、客にどう言いくるめるか、ここの知恵一つで決まるんや。……ええか、その包丁は『歯(刃)が抜けん』長寿の守り神、柄が抜けるのは『幸運を掴(柄)み取る』予兆や。……そして、その詰まった竹こそが、今回の目玉やで」


「……ただの棒が、目玉だって?」


「アホ。空気が通らんっちゅうのは、これ以上ない『ふく』の貯まり場や。ええか、普通の竹は吹けば風が向こうへ抜けるが、それじゃあ家の中の福まで一緒に吹き飛ばしてしまう。……けど、この節の詰まった竹なら、旦那が精一杯吹き込んだ『吹く(福)』が、どこへも逃げんと、竹の中に、そして旦那の懐の中に、どんどん『貯まって(詰まって)』いくっちゅう寸法や。……『不節(不摂)制も詰まる』から病気もせん。さあ、そう言うて売ってきなはれ!」


亀吉は半信半疑で、市場の片隅に店を広げました。するとさっそく、一人の隠居がやってきて、その火吹き竹を手に取りました。


「おい、若旦那。この火吹き竹、節が抜けてねぇから、風がちっとも通らねぇぞ。不良品じゃねぇか」


亀吉は、叔父貴の不敵な笑みを思い出し、胸を張りました。


「隠居さん! お目が高い! そりゃあ『福(吹く)が貯まる竹』でございます。外に風を送るような安い竹じゃあ、せっかくの福まで吹き飛ばしちまいます。ですが、この節の詰まった竹で『吹く真似』をしてみておくんなせぇ。隠居さんの吐いた福の息がどこにも漏れず、そのまま隠居さんの元に『詰まりに詰まって貯まる』っちゅう、開運の宝物でさぁ!」


「なるほど! 運を外へ逃がさず、福を貯めるとは、そりゃあ有り難い!」


隠居は喜んで、ただの棒切れを言い値で買っていきました。亀吉がホクホク顔で店に戻ると、店主は焼き網の上で旨そうに脂を滴らせる鰻をひっくり返しました。


「……ふう。亀、ようやったな。ただの棒でも、わしのついた『嘘(夢)』が詰まれば、客にとっては黄金の杖に化けるんや。『道具屋』っちゅうのは、便利を売る店やありまへん。客の『欲』をパンパンに詰(積)もらせて、こちらの『ふところ』を温める店、っちゅうこっちゃな。」



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