表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/13

~時うどん成らぬ時鰻?~②

「おい、そこの二人組! ちょっと待ちなはれ!」


呼び止められた二人組は、面食らった顔で足を止めた。熊公は鼻息荒く詰め寄ると、今聞いたばかりの「うどんの勘定」について根掘り葉掘り聞き出しよった。


「……なるほどな。箸だの鉢だのと褒めちぎって、店主の気をそらした隙に、数を数え間違えるふりをして一文くすねるんか」


兄貴分の方が、ニヤニヤしながら頷く。


「そうでんねん。けどな、これには肝心な『おち』があってな。実はここからが……」


「……へっ、もうええ。そこまで聞けば十分や」


熊公は、男が最後まで説明するのを手で遮った。


頭の中では、さっきのボロい鰻屋の店主を、自分の口八丁でこてんぱんにやり込める光景が、ありありと浮かんでいた。


(あの親父、応仁の乱だのなんだのと人を食ったようなことぬかしやがって。……よっしゃ、今度はこっちが、あの煤けた店を煙に巻いてやる番や)


熊公の口角が、不敵に吊り上がる。


店主に巻き上げられた「三文」の恨みを、倍にして返してやる。その確信に満ちた、嫌な予感しかしない笑み。


「じゃあな。勉強になったわ!」


熊公はひらひらと手を振ると、意気揚々ときびすを返し、再びあの鰻屋の暖簾のれんを目指して夜道を突き進んでいった。


二人組は、去っていく熊公の背中を呆然と見送っていたが、やがて若者がポツリと漏らした。


「……兄貴。あの人、肝心な『おち』を聞かんと行ってもうたけど、大丈夫でっしゃろか」


「知らんがな。……まあ、あんな自信満々な顔してんねや。きっと、よっぽどの策士さくしなんやろ」


月の光に照らされた八軒家の浜に、熊公の鼻歌だけが虚しく響いていた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ