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第十九話 腹黒令嬢は人形剣士に読み聞かせをする

シュヴェアートが子どもの頃から、国王シルトに仕える事を強要されていたと知ったシャイデ。

その子ども時代を取り戻させるべく、行動を開始しますが……?


どうぞお楽しみください。

 私は本を手にシュヴェアートの元へと向かう。

 シュヴェアートが子どもの頃、本はおろか碌に物語も聞いた事がないであろう事は分かった。

 ならば教えなくては!

 物語の楽しさを!


「シャイデ様。何か御用ですか」

「はい。本をお持ちしましたの」

「そうですか」

「私が読みますので、聞いてくださいます?」

「分かりました」


 ふふっ、思った通り素直だこと。

 シュヴェアートは陛下の言った事、引いては親の命じた事に逆らえない。

 いずれはそのかせを壊すつもりではあるけれど、使えるものなら有り難く使わせてもらおう。


「では『王子様の冒険』。昔々ある国に、とても賢い王子様がいました。王子様は心優しく、大きくなったら立派な王様になると誰もが思いました」

「……」

「しかしその国の決まりで、王子様が王様になるには、いくつかの試練を乗り越えなければいけませんでした」

「……」

「その時、年若い一人の騎士見習いが声を上げました。『私は王子様の剣。如何なる困難も打ち払ってみせましょう』と」

「……」


 ふふっ、本の挿絵にじっと目を向けているわね。

 これぞ子どもの心を掴む手練手管!


 『聞かせたいその子の身の上に近い物語を選ぶ事』

 『ただし主役ではなく、準主役にしておく事』


 子どもが自分の知らない世界の物語を受け入れるには時間がかかる。

 だからまずその子の身の上を聞いて、それに近い物語を探すのだ。


「二人は試練に向けて、城を旅立ちました。最初の試練は誰もが迷う『迷いの森』の魔女に会う事……」

「……」


 しかしその際に注意しなければならないのは、その子に近い境遇の登場人物が主役だと、その後の展開が難しい事だ。

 主役であれば、物語の最後に必ず一つの結末に辿り着く。

 そこに気持ちを傾けていた場合、その結末と自分の希望との齟齬そごに不満や落胆を覚えるものだ。

 しかし準主役は、その結末が語られなくても物語の進行上問題はない。

 結末を想像に任せる形であれば、聞き手は自分の望む未来を創造できる。


「暗い森の入口に立った二人は、その恐ろしさに身震いしました。しかし王子様は王様になって皆を守る為、騎士見習いは王子様を守る為、勇気を振り絞ります」

「……」


 また聞き手の没入を妨げない為に、固有の名前が付いていない方がいい。

 そうこう考えていると、結局自分で書くのが早いという事になってしまうんだけど……。


「王子様は横を歩く騎士見習いの手が震えている事に気が付き、そっと掴みます。『大丈夫だ。お前の事は私が守る』と言って」

「……」

「王子様の手が震えているのを感じた騎士見習いは、その手を強く握り返します。『では王子様の身は私が守ります』という誓いを添えて」

「……」


 ……若干私の好みの展開になってしまうのが難点だけど……。

 まぁシュヴェアートはそこまで察しはしないだろう。


「二人は手を繋いで薄暗い森の中を進みます。あちこちから不気味な鳴き声が聞こえる度に身を竦ませながら、それでも一歩一歩森の奥へと歩いて行きました」

「……」

「すると突然目の前が開け、二人は大きな泉の前に辿り着きました。あまりの景色の違いに驚いている二人の前に、美しい女性が現れました」

「……」


 ……集中して見てくれているのかな……?

 あまりにも反応がないと、少し不安になるのだけど……。

 まぁこの話も間も無く終わるから。

 子どもの心を掴む手練手管!

 『物語は短く簡潔に完結』!


「女性は二人に告げます。『私は迷いの森の魔女。誰かの為に恐怖を乗り越える力、確かに見届けました。第一の試練は合格です』と。二人は手を取って喜びました」

「……」

「こうして二人はその後も試練を乗り越え、王子様は立派な王様になりましたとさ。めでたしめでたし」

「お待ちください」

「!?」


 お待ちください……!?

 結末が気に入らなかった……!?

 陛下に心酔するよう洗脳されたシュヴェアートには、この展開が一番良いと思ったのだけれど……。


「他の試練とはどんなものですか」

「えっ」

「この王子と騎士見習いは、他にどんな試練を乗り越えたのですか」

「……えっと……」


 ……続きが気になる、という事かしら……?

 いや全く考えてはいなかったけれど……。


「またお持ちしてもよろしいのですか?」

「お願いします」


 表情は変わらない。

 口調も平坦なままだ。

 でも多分楽しんでくれている。


「では近々お持ちいたしますわ」

「お願いいたします」


 そうと分かれば、第二話を書かないと!

 またメートヒェンに紙と画材を頼まないとね!

読了ありがとうございます。


いやー、物書きとして、反応があると張り切りますよねー。

「続きを期待してます」とか感想をもらった日には、張り切っちゃうのもわかりますよねー。


べっ別に強要なんかしてないんだからなっ!

勘違いするなよなっ!


まぁ明日の更新はパロディ昔話なんですけどねー。


次話もよろしくお願いいたします。

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