表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/20

第十五話 腹黒令嬢は人形剣士の対応に溜飲が下がる

一夜明け、王宮での生活に慣れ始めたシャイデ。

そこに思わぬ事態が……?


どうぞお楽しみください。

 な、何とか乗り切った……。

 シュヴェアートの朝の身支度……。

 ちゃんと、その、ま、前も拭き切った……!

 話で聞いたり挿絵で見たり、知っているつもりではいたけれど、あんなに生々しく、おどろおどろしいものだったとは……。

 だが絶対王妃になってモイスヒェンに目にものを見せてやるという決意が、私に恐怖へと立ち向かう力をくれた。

 もうこれで私が王宮に住む事を阻むものは何もない……!


「お姉様ー!」


 ……いた。

 一体王宮の警備はどうなっているの……?

 ここは陛下の寝室に繋がる廊下なのよ?


「私に何も言わずに王宮に住むだなんて、何故ですのお姉様!」

「レーレ卿がそう望まれたからよ」

「なっ……!」


 顔色を変えるモイスヒェン。

 嘘は言っていない。

 シュヴェアートの身の回りの世話をする侍女がいないから私が呼ばれた。

 何もおかしいところはない。


「それに私はレーレ卿と同じ部屋をいただいていますのよ」

「っ!?」


 嘘は言ってない。

 部屋は同じだ。名目上は。

 シュヴェアートはほとんど利用していないが、それはここで言う必要のない話だ。


「そんな……! お姉様とシュヴェアート様が、まさか、そんな……!?」


 しかし日頃から婚約者のいるいないで、私を煽って来たモイスヒェンが右往左往している姿は、いくらか心地良い。

 おや、何とか動揺から立ち直ったのか、私に涙交じりの視線を向けてくる。


「よ、嫁入り前の令嬢が男性と同じ部屋で夜を共にするなど、はしたないと思われないのですか!?」

「いずれ夫婦になる関係なら、多少順序が前後しても問題ないのでは?」

「〜〜〜!?」


 シュヴェアートとは同じ部屋で過ごしていないのだから、何の問題もない。

 昨夜の廊下での出会いは、部屋じゃないから問題ない。


「……では未来の義兄となる人にご挨拶は必要ですわよね!」

「あっ、ちょ、モイスヒェン!?」


 止める間も無くモイスヒェンは、陛下の執務室に向かって走り出した!

 まずい!

 これでシュヴェアートにモイスヒェンが問いかけて、いつもの冷たい対応をされたら……!


『シュヴェアート様! 私の姉シャイデとどういう関係ですの!?』

『身の回りの世話を頼むだけの関係です』

『まぁ! お姉様ったら下女の真似事をしてまでシュヴェアート様に取り入りたいだなんて! あぁ! 婚期が遅れるというのは悲しいものですわねぇ!?』


 こうなるに決まってる!

 何とかモイスヒェンの問い自体を潰さないと!

 掴むには遠いが、もう一息勢いを付ければモイスヒェンの背に手が届く……!

 ……だからといってモイスヒェンを叩いたり転ばせたりする事はしたくないし……!


「シュヴェアート様!」

「……あなたは」


 うあ!

 あれこれ考えている間に、モイスヒェンはシュヴェアートの元に!

 勢いに任せて目の前で妹を叩いたり蹴り飛ばしたりしたら、後で陛下にどう報告されるか……!

 万事窮す……!


「どなたですか」

「へ」


 ……あら?

 ほんの数日前に会っているはずなのに……。

 モイスヒェンに対する拒絶?

 ……陛下の警護以外に興味のないシュヴェアートなら、本当に覚えていない可能性もあるけれど……。


「……な! 何を仰っているのですか!? 私はハイルング子爵家の侍女、モイスヒェンですわ!」

「そうですか」

「そ、そうですかって……!」


 顔を真っ赤にするモイスヒェン。

 小さい頃からその恵まれた容姿でちやほやされて来た立場からすれば、一度会ったのに顔を覚えていないというシュヴェアートの態度は許しがたいものだろう。

 普段なら面識のない男ですら、モイスヒェンの気を引こうと知り合いのような顔をするのだから。


「うぅ……!」


 前も持ち込んだ高級菓子を断られている。

 その上で顔すら覚えられていないという屈辱。

 歯噛みする姿も可愛らしいが、それすらシュヴェアートは意に介さない。


「ではシルト陛下の警護がありますのでお引き取りください」

「ふゅ……!」


 この上ない明確な拒絶。

 シュヴェアートに想いを寄せるモイスヒェンには辛い事だろう。


「お、覚えてなさい! その態度、必ず後悔させて差し上げますから!」

「そうですか」

「んぎ……!」


 乙女にあるまじき、それでも可愛い怒りを顔に上らせて、モイスヒェンは立ち去った。


「今の方はシャイデ様の妹君でしたか。何か御用だったのでしょうか」

「……いえ、大した事ではないと思いますわ」

「そうですか」


 ……シュヴェアートは何を基準に人を受け入れているのだろう。

 多くの言い寄る令嬢の中から私を選んだ。

 私の手作りの差し入れは受け入れて、モイスヒェンの高級菓子は拒絶した。

 私の事は覚えていても、可愛いモイスヒェンは記憶にない。

 ……これって……?


「ではお昼の差し入れをお待ちしております」

「……はい、腕によりをかけたものをお持ちしますわ」


 違うな。

 私はただ普段の食事と違うものを運んで来るだけの存在。

 シュヴェアートが心を向けているのは陛下だけ。

 うん違う。

 ……多分違う、はず……。

読了ありがとうございます。


シュヴェアートは女には興味がない。

シュヴェアートはシャイデの事だけは受け入れている。

三段論法的にいけばこの結論は……?


次回もよろしくお願いいたします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ