第十二話 腹黒令嬢は人形剣士の内情に理解を示す
シュヴェアートの部屋の閑散とした様子に、若干の恐怖を感じるシャイデ。
それでもめげずにシュヴェアートと会話を試みますが……?
どうぞお楽しみください。
陛下の執務室の前。
直立不動のシュヴェアートが、近付く私に顔を向けた。
うーん、昼までの間に少し話をと思って来たけど、任務第一のシュヴェアートが私のお喋りに付き合ってくれるだろうか……。
……無理な気がしてきた……。
「シャイデ様。何か御用ですか」
「あ、えぇ、その、少しお話ができたらと思いまして……」
「わかりました」
「えっ?」
……まさか即断で許可をもらえるとは……。
護衛の邪魔だと言われるかと思ったのに……。
「それで私に話とは何でしょうか」
「その、よく読まれる本とかありますでしょうか?」
「本はほとんど読みません」
「そ、そうですか……」
こっちで取り付く島がないとは……。
しかし話しかけた以上、話題を繋げないと……。
「それでしたらお休みの日は何をなさっていますの?」
「休みというものはありません。常にシルト陛下の護衛を務めておりますので」
……この人正気?
休みなく護衛を務めるなんて、まともな神経とは思えない!
……いや、ここで否定しては駄目だ。
おだてて好意的な感情を向けさせよう。
「それは素晴らしいですわ。休みも全て国の為に尽くすだなんて、騎士の鑑ですわ」
「国の為ではありません。ただ私の義務ですから」
「……そ、そうですか……」
……これは喜んではいないな……。
かと言って気に障った様子もない。
陛下に対する忠誠心、か……?
それにしては行き過ぎの感もあるけれど……。
そこを褒めたらどうだろう……?
「へ、陛下に対して深い忠誠心をお持ちなのですね。きっと陛下もレーレ卿のその忠誠を喜ばしく思われていると思いますわ」
「本当ですか」
「ひぇっ!? え、えぇ、きっと……」
「そうですか」
きゅ、急に顔を寄せないで!
……でもやはりシュヴェアートは陛下に対する忠誠心を核に生きているようね。
それに全力を注ぐあまり、他には意識が向かないのかしらね。
髪型の事もそうだったわ。
護衛に必要ないと言いながら、身だしなみを整える方が陛下に利があると話したら素直に応じた。
そう考えると、あの部屋の殺風景さも頷ける。
私に興味がないのも理解できる。
そしてここから、私が王妃になったら陛下にとって有用であると示せば、協力してくれるかもしれない。
となれば……。
「レーレ卿。王宮の書庫をお借りする事は可能でしょうか?」
「シルト陛下の許可があれば可能です」
「ではお時間のある時で構いませんので、レーレ卿からお願いしていただけないでしょうか? 陛下のた」
「わかりました」
「め、え……?」
「間も無く毒見の時間になりますので、その時にシルト陛下にお伺いします」
「あ、ありがとう、ございます……」
こ、こんなにあっさり許可されるなんて……。
渋られたり理由を聞かれたりしたら、陛下の為に学びを深めたい、と主張するつもりだったのに……。
でも車庫の閲覧許可がもらえるのはありがたいわ。
王妃になる為にやれる事は山程あるはずだから。
読了ありがとうございます。
プライベート全捨てで尽くすその様子を、忠誠心で片付けて良いのかどうか……。
次話もよろしくお願いいたします。




