第十一話 腹黒令嬢は人形剣士の部屋を探る
新年最初の投稿です。
本年もどうぞよろしくお願いいたします。
シュヴェアートの着替えを手伝ったシャイデ。
シュヴェアートが国王シルトの護衛に行くと暇になり……?
どうぞお楽しみください。
……うーむ。
する事がない……。
身だしなみを整えたシュヴェアートは、陛下の護衛として執務室の前に立っている。
部屋に運ばれて来た朝食を頂いた後、何度か陛下とお会いできないか探りを入れてみたものの、シュヴェアートは鉄壁だった。
「執務中は専属の侍女以外は通さない決まりになっています」
とけんもほろろ。
まぁそれは予想していた。
しかし予想外だったのは厨房だった。
「お話は伺っております。どうぞここにあるものは何でもお使いください」
料理人の皆さんはそう言って、私に場所と材料を譲ってくれた。
素人が厨房に立つ事をよしとしない料理人が多い中、王宮の料理人の皆さんはあっさりと通してくれた。
お陰でシュヴェアートへの差し入れは早い段階で作り終えられた。
作り終えてしまった。
断られてからの交渉や、最悪家に帰っての調理も想定して早めに行ったために、ぽっかり時間が空いてしまった。
「はぁ……」
こんな事になるなら、家からもう少し本を持ってくれば良かった。
……この部屋に何か本がないだろうか?
シュヴェアートに読書家の印象はないけれど、仮にも陛下直属の護衛騎士。
全く本を読まないという事もないだろう。
そこから何かシュヴェアートとの話題を見つけられたら、今のような態度が改善するかもしれない。
……何か弱味でも見つけられれば、それを盾に陛下との面会を求める事も……!
そうと決まれば部屋を少し探ってみよう。
……な、何もない……。
服が一揃えだけ……。
本どころか書き物の一つもない……。
「どうなっているの……」
力なく呟くと、私は椅子に腰を下ろした。
ほとんど使っていないとは言っていたけれど、本当にここはシュヴェアートの部屋なの……?
でもわざわざ空き部屋を、シュヴェアートの部屋と偽ってから私に使わせる意味がない。
だとしたら、この私物の無さは一体……。
「……まさか本当に人形じゃないわよね……」
口に出すと、不気味さが込み上げてくる。
いやいや、さっき触れた身体は生身の人間だった。
きっと私に貸す事になったから慌てて物を移したのだろう。
そうに違いない。
「……行こう」
言葉にして気合いを入れると、先程作った差し入れを手に立ち上がる。
まだ昼には早いけれど、この部屋で一人でいるよりは建設的だろう。
扉を開いて、ふと振り返る。
寝台と衣装箪笥、そして椅子と小さな卓しかない部屋。
とても寒々しく思えて、身震い一つすると私は扉を閉めた。
読了ありがとうございます。
シュヴェアートも単なる無愛想ではないようで……。
次話もよろしくお願いいたします。




