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第36話

 昼食時、カフェテリアへ向かう私は、やはり緊張状態だった。あの後、結局ユリウス殿下に話しかける事は出来なかったのだ。その癖、人一倍気になって事ある毎にチラチラと盗み見てしまう。授業中、殿下の後頭部をボーッと眺めていると、突然殿下がこちらを振り返った。視線がばっちり合って、私は仰天して、思いっきり目を逸らしてしまった。

 ・・我ながら過剰過ぎる反応だわ。これでは逆に、盗み見てましたと言わんばかりじゃないの・・。たかだかキスよ。しかも一瞬、軽く触れただけの。あの程度の事でこんなに挙動不審になるだなんて呆れられてしまうわよ。


(今度こそ普通に、きちんとお礼を述べなくては。これ以上の不審な行動は慎まなくてはいけないわ・・!)


 自分の心に喝を入れた所であった。カフェテリアの入り口へ向かう回廊の曲がり角で、向こうから歩いてきたユリウス殿下にバッタリと出会したのは。


 あ。


 突然過ぎて頭が真っ白になった。私の頭にあったのは「とにかくお礼を言わねば」という思いだけ。私はめちゃくちゃ強張った顔で、余りにも無様な礼を彼へと向けた。


「ごっ、ご機嫌ようユリウス殿下っ・・き、昨日はそのっ・・、お招きいた、いただきましてまことにありがとうござしますたっ」


 噛み噛み! 消えて無くなりたい!


 ユリウス殿下も唖然としてるわ。不審の目で私をじっと見て・・


 え。なんか近いわ。近づいてきてる? え? 殿下の手がこっちに伸びて────。


「葉っぱ付いてる」


(えぇーーーー!?)


 いつから付いてたのかしら? やっぱり朝木陰に身を隠したから・・。そんな事よりも、殿下の指が、私の右耳に触っ・・いやそれより何よりっ・・めちゃくちゃ近いわ!?


 ユリウス殿下のお顔、本当に整ってるわ。少し長めの黒い髪が目にかかる感じもとても色っぽい・・前から綺麗だと思っていたけど、でもなんか、今日はなんか、いつもより一際輝いて見える・・!


(眩し過ぎて直視出来ません!)


 真っ赤になった。あまりの輝きに耐えきれなくなった私は、高速でその場から飛びずさり、後ろに立っていた回廊の柱にバンとぶつかってしまった。


「あ、ありがとうございます!!」


 私の耳に手やったままの格好で取り残されたユリウス殿下が、ちょっと驚いたみたいな顔でこっちを見ていた。明らかな過剰反応。恥ずかし過ぎる。

 しかしその時、天の助けとばかりに聞き覚えのある快活な声が聞こえた。


「おーい、クローディア〜! ユリウス殿下〜!」


 オーウェン! 助かった! その時私は見るからに、ほっとした顔をしていたんだと思う。


「何やってんだ二人してこんな所で睨み合って?」


 睨み合ってる訳じゃないわよ!


「睨み合ってなんかいないわよ。カフェテリアに行く所に決まってるでしょう!」


 顔が真っ赤なのに気付かれたら、またオーウェンに揶揄われてしまう。私は平静を装って颯爽と歩き出した。が・・


「おいっ、クローディア、前!」


 前?


 と思ったときには既に遅し。


 私は目の前に置かれていたカフェテリアの立て看板に思い切り激突し、転げた看板に乗り上げ顔面を床に強打して、鋭い激痛に見舞われる。そして更にそのまま一回転して、派手に背中から地面へと叩きつけられた。あまりの事に呆然と天を仰いだ私の鼻から、生暖かいものが伝って流れていく。


 ────最っっ・・悪・・。


 



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