表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/57

第35羽

 学園に着くと、前の方に艶のある黒髪が見えた。私達が昼食を共にしたりと交流する姿が見られているせいか、以前は厚かった囲みの壁もだいぶ薄れてきている気がする。


 本来なら挨拶するべきだろう。昨日お招き頂いたお礼を兼ねて・・。



"好きだ。クローディア"



 体温が一気に、上がったのを感じた。殿下の唇の感触が、巻き付けられた腕の感覚が、身体を伝う熱の温度が・・思い出すとぞくりと、身体を妙な疼きが震わせる。


 どんな顔をしたらいいのか、分からなくて。


 だって昨日、ほとんど眠れなかった。何度も思い出して。あの情欲のこもった熱い眼差しを思い出すたび、心臓がうるさくて身体を熱くさせる。

 結局ユリウス殿下に声をかけられぬまま、私は距離を保って殿下の後ろをついて行った。しかし。


「クローディア様っ、おはようございます!」


 元気よくかけられた挨拶。その声に気づいたのか、前の方を歩いていたユリウス殿下が、振り返────。


 そう思った瞬間。私は秒速でかたわらの街路樹の影に、情け無く縋り付く様に身を隠していた。


「クローディア様・・? 何をなさっておいでですか・・?」


 はっ。


「な、何でもないわ。気になさらないで・・」


「はぁ・・」


 この時の女学生達の困惑顔は一生忘れないかも。我ながら怪し過ぎるわ。なんたる失態なのかしら。

 で、殿下には見られてないわよね・・?


 木の影から彼の方を覗くと、彼は既に前を向き歩みを再開させていたので、私はドキドキとしていた胸をほっと撫で下ろす。


 どうしちゃったのかしら私・・。殿下に話しかける事はおろか、近づく事すら出来ないなんて。もしかして以前ユリウス殿下が心の中で言っていた「近づいたら死に至るレベル」というのは、こういう事なんじゃ・・?


 その時、ふと湧き上がった違和感に見舞われて、私は木陰で一人、人知れず呟いた。


「・・心の中で言っていたって・・何言ってるのかしら、私・・?」


 何の妄想よ。他人の心の声が聞こえる訳ないじゃない。本当に私、おかしくなってしまったのでは?


「はぁ・・我ながら馬鹿馬鹿しい・・」


 深い溜息をついて、とぼとぼという形容が似合うほど、情け無く肩を落として学舎へと向かった。そんな私の様子を遠巻きに、あの黒い瞳が見つめていた事など気が付かずに────。




 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ