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第29話

「具合が悪いなら少しここで休んでいろ」


 だからって上から押さえつけちゃダメです。休めません。この体勢じゃ全然、休めませんよ? むしろ動悸が激しくて悪化してる気がします!


「わ、わかりましたわ殿下・・。それでは少し、一人にさせて頂けますか・・?」


「分かった。医師を呼ぼうかクローディア」


「結構です。ほんの軽い立ちくらみですので、これでも大袈裟なくらいですわ・・!」


「分かった。遠慮なくゆっくりしてくれクローディア」


 分かったならどいて!?


 しばらくベッドの上で睨み合った私達。殿下の目がバキバキにキマッている気がするのは気のせいでしょうか。


( くっ・・まさか本当に、変なことしようとしてるんじゃないでしょうね!?)


 私は「心を読む」ボタンを押した。早速頭の中にユリウス殿下の声が響いてくる。


【クローディアが俺のベッドの上に寝ている・・俺にとってはこの景色、ご褒美以外の何物でもない】


 寝てるというよりは貴方様が張り付けに・・


【まずいぞ。あっち行けって言われたのに、ずっと見てたい欲望が強すぎて身体が動かん!】


 え? 見てたいだけ? それならまぁいいか・・?


 手首を捕える殿下の手が汗ばんでいるのを感じる。間近で一心に私を見下ろす、夜空を切り取った様な漆黒の瞳に、自分の姿が反射して映り込むのすら良く見える。殿下の男性的な喉仏が、唾を呑み下す音と共に動くのがはっきりと見てとれて・・


(近いて!! やっぱり無理!!)


「重いです殿下! いい加減どいてください!」


 羞恥が限界を迎え、結構強い口調で睨むと、ユリウス殿下はやっと私の手首と身体を解放した。彼が「好きなだけゆっくりしてていいから」と念をおして、寝室のドアから出て行ったのを確認して、私はほっとして強張っていた身体を脱力させる。

 

 焦った・・。本当に襲われるかと思った・・。

 お言葉に甘えて少し気を落ち着かせてから行こう。


 ・・・・。


 ユリウス殿下は毎日ここで寝てるのよね・・。

 つまり殿下の「何百夜に及ぶ妄想」とはここで────。


 ここは王宮だ。従者は足り過ぎるぐらいいるし、恐らくだがシーツは毎日取り替えられているに違いない。それに男の子は皆そういうものであって、何も殿下に限った事ではないと、シルフィ様は言っていた。必死にそう言い聞かせたけれど、だけどどうしてもこのベッドに寝ている事がとても卑猥な事のように感じて、私は結局、すぐに身を起こして寝室を出たのでした・・。


 


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