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第28話

「クローディア」


「はい?」


「たまにはその・・二人でどこか出かけないか」


 ユリウス殿下からの突然の申し出。これはやっぱり・・「デート」というやつと解釈すべきですよね。

 

 学園で毎日のように顔を合わせてはいるけれど、ランチタイムにはオーウェンやユミルが割って入ってくるし、二人きりという機会はほとんど無いのが現状。そこへ改めて《《二人で》》と念押しされると、とっても緊張してしまう。

 デートなんてした事が無いし。一体何をすればいいのかしら? 普通は街でお食事とか、馬で遠乗りとか・・?


 しかし。


 その日、私の家に迎えに来た馬車に揺られて連れて来られたのは、王宮内の西の一画にある、アベリア宮殿と呼ばれる離宮であった。その名のとおりアベリアの花が見事な庭園を備えているが、それ意外の季節でも四季折々の花々が咲き乱れる、それはそれは見事な宮殿である。ユリウス殿下は立太子された後、この離宮に一人でお住まいになられている。何でも外出許可が出なかったと言う事で、私はここへ連れてこられたのである。


「すまないな、こんな所で。何の面白味も無いが、ゆっくりしていってくれ」


 私の乗る馬車が到着すると、ユリウス殿下は自ら門のところまで出迎えに来てくれた。周囲には少し距離を置いてではあるけれど、何人もの護衛と思われる帯剣した兵士の姿が見てとれる。考えてみれば当然の事なのかもしれない。ユリウス殿下はこの国の王太子であり現国王唯一の嫡子である。実は学園にも配置されている警備兵が常に動向を確認しているし、ある意味私達が本当に二人きりになれる場所など皆無に等しいのだ。建物の前に広がる庭園では、見頃を迎えたエリカの花や薔薇が可愛い花を揺らしていた。


「まぁ。相変わらずここの薔薇は見事ですわね」


「相変わらず?」


 思わず言ってしまってから、私は失言に気づいて口を押さえたが、殿下はやはり怪訝な顔をしていた。


「む、昔・・あまりに見事なお庭なので門の向こうから覗いた事がございまして・・」


「そうか。君は昔から花が好きなんだな。せっかくだからゆっくり見て回るといい。・・ここは後の、君の住まいでもあるわけだし・・」


 ────そうなのだ。私は卒業後、ここでユリウス殿下と二人で住む事になる。

 だから知っているのです。だって前の人生で一年近く、この門の中だけで暮らしていたのですもの。


 離宮の中へと入ると、玄関ホールに広がる最高級の赤い絨毯。大理石で作られた螺旋階段に、天井に広がる美しい壁画に、豪奢な黄金の塗装、細かいガラス細工のシャンデリア。どれもこれもが見覚えのあるものばかり。昔から皇族の住まいとして使用されてきただけあって誠に贅沢な造りで、相変わらず落ち着かない。そしてこの階段を上がった廊下の左側には・・広いテラス付きの、私の部屋がある。そこで私は、ユリウス殿下にカナリヤもろとも斬り殺されて────。


「そっちは君の部屋として使う予定だ。見ておくか?」


 ぶるっと、思わず身震いした。いくら過去の事とは言え・・自分が殺された場所に、殺したその相手と行くのは、流石に心地が悪い。


「いえ、今は結構ですわ・・」


 私が青ざめて口元にハンカチを当てると、殿下が心配気に顔を覗き込んでくる。


「どうした。顔色が悪いな」


「申し訳ありません。少し目眩がしてしまいまして」


 すると殿下は、ここで私の想定外の行動を見せる。

 ふわっと、私の身体が宙に浮いた。

 そう。突然ユリウス殿下が、私の身体を抱き抱えたのだ。


「でっ・・でんかっ!?」


 仰天する私を無視して、殿下は私を抱えたまま反対側の自分の部屋へ入ると、その奥の寝室のドアを勢いよく開けた。そしてそこに置かれた大きなベッドの上に私を降ろす。


「で、でんかっ・・大丈夫ですからっ」


 慌てて起きあがろうとしたのだけど、私は両の手首を捕えられ、ベッドへと張り付けにされてしまう。

 ギシっというベッドの軋む音と、覆い被さる様に上に乗ったユリウス殿下の、私を見下げる濡れた黒い瞳。

 こ、これは────ヤバい体勢としか言いようがありません!


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