第16話
殿下は相変わらずの無表情で、広げられた弁当のおかずに黙々と手をつける。対する私も・・やはり無言で食す。耳を騒がすのは気まぐれな風と、遠巻きな鳥の囀り。王都の中心部とは思えない程の静寂が私達を包んでいる。
そうでした・・
再び開催された殿下とのランチ会。いつも心を読んでいては申し訳ない気がして、今日はボタンを押さずに挑戦しているのですが────。
社交性ゼロの殿下と、同じく社交性1程度の私。心を読まずして、無表情の殿下が一体何を考えているのやら、恐ろしくて会話が弾む筈もない。今までの人生、公式の場では同じ公爵家という立場もあり必ずオーウェンがいたし、人一倍明るく面倒見の良い彼が常に人の輪の中に私を引き込んでくれた。今までどれだけ彼を頼って楽をしてきたのか、身に染みるようだ。
「き、今日も良いお天気ですわね」
「そうだな」
「て、天気が良いとそれだけで心が晴れやかになりますわ!それに蝶々達も、あんなに楽しそう」
「そうだな」
う・・我ながらなんて面白味の無い会話! 心なしか殿下が冷たい様に感じるっ。殿下の冷え切った心が少しは溶けたと思ったのは気のせいで、まだ警戒されている? それとも単純に、あの意外すぎる心の中が聞こえていないせい?
どうしようわからないわ。申し訳ない気はするけど、やはりあのボタンを押すしか・・
私が誘惑に負け、ボタンに手を伸ばしたときだった。
「あれぇ! クローディア! とユリウス殿下!?」
驚いて視線をやると、そこには昨日と同じ、あのいやらしい笑みを浮かべたオーウェンの姿が。
「オーウェン!?」
「いやぁ、奇遇だなぁクローディア。まさかこんな所で会うなんて。しかもユリウス殿下と一緒とは」
絶対面白がって見学に来たでしょ!?
オーウェンは無遠慮にもずかずかと敷物に上がり、なんの疑問もなく広げられた弁当の横へと腰を下ろした。
ん? オーウェンまさか・・混ざる気か?
「いやぁユリウス殿下。いつもウチのクローディアがお世話になってます。こいつ昔から気弱で引っ込み思案で、殿下と上手くやっていけるのか心配してましたが安心しましたぁ」
「ああ。こちらこそ・・俺の婚約者がいつも世話になっているようだな・・」
────絶対零度の冷気が・・?
殿下の目が・・心を読まなくても分かる殺し屋の様な目というか、まさに稀代の暗君たる目でオーウェンを見てます! ヒィィィィ! これは何か、絶対変な風に捉えていらっしゃる気がします! 私は音速のスピードで「心を読む」ボタンを押した!
【忌々しい寄生虫が・・早速邪魔立てするか。抜け抜けとウチのクローディアだと・・? 昔から一緒ですアピールでマウント取ろうとしやがって、やっぱりこいつは殺さないと気が済まん!】
やっぱりぃぃぃぃぃ!!




