第12話
ユリウス殿下が今日もお取り巻き達に囲まれている様子を、私は遠巻きに眺めていた。途中近くを通ったが、殿下からお声がかかるどころか、気にかける素振りもなく、完全にスルーされてしまう。
────殿下にランチのお誘いを断られてしまいました。
私はあの鳥籠の中の夜鳴鳥を眺めながら、一人呟いた。
「詰みだわ・・」
殿下の心は猜疑心で溢れている。打ち解けようと近づいたところで逆に疑念を増すだけでは、最早打つ手無し。私の運命はやはり、この夜鳴鳥の様に鳥籠の中で、殿下の顔色に怯えながら過ごすしかないのだろうか。
一人溜息をついたところだった。鳥達の世話をしにユミル・ガーベリアがやって来たのは。
「クローディア・・様」
しまった。ユミルが昼休憩に此処へ来るの、すっかり忘れていた。なんだか私がユミルの事を待っていたみたいじゃない。
「あ、ああユミル、ご機嫌よう。そういえば貴方は鳥達の世話をしてくれているんだったわね」
「クローディア様も餌、あげてみますか?」
ユミルが手にしたバケツの中には野菜スティックが入っており、これをトングで差し出すらしい。興味を惹かれた私は餌やりに挑戦してみる事にした。野菜をつかんだトングを恐る恐る鳥籠の中へ差し出すと、しばらくして木の上に停まっていた夜鳴鳥が、翼を羽ばたかせて地へと舞う。近くで見ると結構な大きさで、翼の風圧を受けて情けなくもビクリとしてしまった。野菜を近くの地面に置いてやると、夜鳴鳥はその大きな嘴で器用にそれを咥えて見せた。
「わぁっ、食べた!」
自分のあげたものを食べてくれると、やはり嬉しい。隣でユミルが笑ったのが空気で伝わった。ちょっとはしたなかったかしら。
「楽しいですか?」
「ええ、とても楽しいわ。ありがとうユミル」
「いえ。楽しんでもらえて良かったです」
ユミルにトングを返すと、ふと、視界の端に異物が映り込んだのに気がつく。嫌な予感がして視線をそちらへと移動させると、今度ははっきりと映り込む、空に浮かんだ「心を読む」の文字。
えっ・・
そして私は見てしまった。建物と建物の隙間の暗がりの中からじっと私を見つめる、黒い二つの目────。
(嫌ぁぁぁーーー!! 殿下!!)




