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第9話 闇の中の覚醒と生存者の選択

目を開けた。視界は、深い水の中に沈んでいるかのようにぼやけていた。立ち上がろうとしたが、頭を鋭い痛みが突き抜け、思わずこめかみを押さえた。ここは、どこだ?


周囲を見渡すと、そこは荒涼とした光景だった。錆びついた鉄格子、湿った石壁、そして自分を押し潰そうとするかのような低い天井。俺は、牢獄の中にいた。


(牢獄……俺をここに閉じ込めて、あいつらは何を企んでいるんだ? 村の連中も、他に誰か捕まっているのか?)


鉄格子まで這っていった。廊下は長く暗く、揺らめく松明の光だけが頼りだった。他の牢屋が見え、その中にはうずくまる人影があった。人間、亜人、そしてエルフまでいた。ほとんどが若者か中年で、誰もが同じ生気のない目をしていた。


冷たい床に座り込むと、思考が濁流のように流れ込んできた。すべてがあまりに早く起きすぎた。クリフはじいちゃんは死に……村は破壊され……俺は何もできなかった。ナオキに殺されかけた。


(リアム……)彼の名前が頭の中で反響した。(あいつは生きている。そんな気がする。ここを脱出して、あいつを見つけ出さなきゃ)


胸の傷を思い出した。不思議なことに、痛みは感じなかった。シャツをめくると、驚いたことにナオキにつけられた傷跡は消えていた。その代わりに、腹部には奇妙な魔法の紋章が刻まれていた。


(何かの封印みたいだ……)冷たく青白い光を放つその模様に触れながら考えた。


頭を振った。そのことは後で考えよう。今はここを出ることが先決だ。手に火の属性を集中させ、ゲームのように鉄格子を溶かそうとした。だが……何も起きなかった。火花一つ出ない。


「なっ……どうして魔法が使えないんだ!?」


もう一度、魔力を無理やり引き出そうとしたが、腹の封印が激しく光り、エネルギーの流れを完全に遮断した。(間違いなく、この忌々しい封印のせいだ。くそっ……どうすればいい。考えろ、タイト、考えろ!)


二時間が経過した。牢獄の静寂を破るのは、遠くから聞こえるすすり泣きだけだった。脱出は不可能だと諦めかけていたその時、重い足音が聞こえてきた。一人の看守が俺の牢の前で足を止めた。


「来い、ガキ。お前の番だ」彼は牢を開け、乱暴に俺の腕を掴んで引きずり出した。


歩きながら、俺はこの場所の本当の恐怖を目にした。人間の骨が転がる牢、腐敗した死体、そして生きているのが不思議なほど傷ついた囚人たち。俺は隔離された部屋へと連れて行かれた。中央には天井から吊るされたロープがあり、隅の机には見たくもないような道具が並んでいた。


「お前はここで待て。外に出ようとすれば、致命的な電撃を食らうことになる。忠告は一度きりだ」看守はそう吐き捨てると、部屋を出て鍵をかけた。


(電撃? そんなハッタリ……)俺はドアノブに手を伸ばした。


指先が金属に触れた瞬間、激しい電圧が全身を駆け抜けた。指が焼けるような感覚に、俺は即座に手を引っ込めた。

「くそっ……本当だったのか。本当にここから出られないんだ」


重苦しい沈黙の中で二十分が過ぎた頃、再びドアが開いた。グレッグ王が、別の人物を連れて入ってきた。


「ほう、グレッグ。こいつが例のガキか?」連れの男が尋ねた。


「ああ、アリエル。こいつだ。連れてきた他の村人どもはもう死んだ。俺とカミで、何も残らなくなるまで痛めつけてやったからな。今や目撃者は、このガキ一人だ」グレッグは、恐ろしいほど平然と答えた。


アリエルはいかにも貴族といった風貌だった。長い金髪をポニーテールにまとめ、痩せた体躯に眼鏡をかけ、知的で冷徹な雰囲気を漂わせていた。


「お前ら、何を企んでるんだ、このクズどもめ……!」俺は顔を伝う冷や汗を拭いながら叫んだ。


「落ち着け、落ち着けよ、坊主。そんなに興奮するな」グレッグが冷笑した。「看守! このガキを縛り上げろ」


俺はロープで吊るされ、両腕を頭の上に伸ばされた状態で固定された。シャツは剥ぎ取られた。グレッグの残虐非道な噂は聞いていたが、まさか自分がその犠牲者になるとは。


(どうして、こんなことばかり俺に起きるんだ? 俺が一体何をしたっていうんだよ……)


「陛下、鞭でございます」看守が、金属の糸が編み込まれた革の鞭を差し出した。


「さて、俺は行くよ、グレッグ。拷問は苦手なんだ。上で待っている」アリエルは貴族特有の蔑みを込めて退室した。


グレッグが空中で鞭を鳴らした。銃声のような音が響いた。

「いいか、タイト。これはただの鞭じゃない。肌だけでなく、体の内側に直接響く魔法具だ。こいつのいいところは、獲物が死ぬまでたっぷり時間をかけて楽しめることなんだよ」


「お前……狂ってる!」俺は、怒りよりも恐怖が勝り、叫んだ。


最初の一撃が放たれた。

「あああああああああああああああ!!」


二撃目、三撃目。衝撃が加わるたびに、魂の欠片が削り取られていくようだった。痛みは体の内側から突き上げ、内臓が押し潰されるような感覚だった。


(ただ平穏に生きたいと願っただけなのに、何が間違っていたんだ? どうすれば、こんな運命を避けられたんだ?)


グレッグは息を切らし、汗を拭いながら一旦手を止めた。水を飲み、顔を拭う。

「続きは後だ、小僧。看守、こいつを『夢の部屋』へ連れて行け」


「はっ!」


廊下を引きずられ、囚人たちが彫像のように固まっている区画へと運ばれた。彼らは牢の中で、純粋な恐怖の表情を浮かべたまま動かなくなっていた。俺もその一つにゴミのように放り込まれた。


ドアが閉まった瞬間、立ち上がろうとしたが体が動かなくなった。何千もの否定的な思考が同時に頭の中に流れ込んできた。前世と今世、あらゆる失敗、あらゆる喪失、あらゆる痛みを、無限ループで追体験させられていた。


「やめろ! 頭の中で喋るのをやめてくれ!」パニックになって叫んだが、部屋の静寂が声を増幅させるだけだった。


生きた心地のしないまま、その精神的拷問の中で数日(に感じられた時間)を過ごした。看守がようやく俺を普通の牢へ移すために戻ってきた時、俺はもう空っぽの殻のようになっていた。


「……ッ」新しい牢の床に血を吐いた。肉体的にも精神的にも、俺はボロボロだった。勝手に目が閉じていく。


夢の中で――あるいは幻視の中で――俺は自分の記憶が映し出される巨大なスクリーンを見た。地球での子供時代、母の死、父から教わった「波風を立てない」「目立たない」生き方。前世の俺が歩み寄り、スクリーンを消した。


「記憶を呼び覚ましてやろう」かつての自分――俺がアレックスと呼ぶ男が言った。


彼は彼女の浮気シーンを見せた。

「他人の顔色を伺うばかりで、自分自身を大切にしていれば、こんなことにはならなかったはずだ」


俺の死のシーンを見せた。

「あの時、固まるんじゃなく動いていれば、死なずに済んだかもしれない」


そして最後に、森で命乞いをするナオキを見せた。

「あそこで奴を殺していれば、クリフはじいちゃんは今も生きていただろう。タイト、お前に起きるすべての災難は、運命がお前を嫌っているからじゃない。お前自身の選択の重さだ。お前が何も選ばないことを選ぶなら、運命がお前の代わりに選び、その代償を徴収するんだ」


「……じゃあ、俺は自分の選択の奴隷だって言うのか?」俺は尋ねた。


アレックスは答えなかった。彼はただ消えた。


牢の中で再び目を開けた。二人の看守が入ってきた。

(きっと処刑に連れて行くんだな……)俺は再び拷問室へと引きずられていった。今度は机の上に斧や針、毒薬が並んでいた。


再び縛り上げられた。グレッグが、リフレッシュした様子で入ってきた。

「さっさと終わらせようか。それが聞きたいんだろ? ははは! 残念だったな。生きたままバラバラにして、お前の血を飲んでやるよ」


彼は病的な喜びを浮かべて道具の準備を始めた。その時、一人の騎士が慌てて飛び込んできた。

「陛下! 上で不測の事態です。アリエル殿が至急お越しいただきたいと!」


「今度は何だ!?」グレッグは苛立たしげに唸った。「待ってろよ、小僧。すぐ戻る」


目を閉じた。意識の空白の中で、アレックスの声が最後にもう一度響いた。

(それで、タイト? お前は何を選ぶ? また運命に決めさせるのか? 死にたいのか、それとも戦いたいのか?)


「俺は……生きるために戦うことを選ぶ!」心の中で答えた。これまでに感じたことのない強い確信とともに。


【スキル:サバイバー(生存者)を獲得しました】

【レベル1 - 初心者】:対象の命を奪った際、犠牲者のスキルを継承し、吸収する。(死亡確認後に発動)


ゆっくりと目を開けた。床の水溜りに自分の顔が映っていた。かつて黒かった髪は、雪のように白く変わっていた。瞳は虚ろだが、鋭い。腹の封印は消えていた。


魔力が戻っている。グレッグがいない間に、音もなくロープを焼き切り始めた。


ドアが開いた。グレッグが戻ってきたが、彼が喋る前に、後ろから兵士がパニック状態で飛び込んできた。

「陛下! 今すぐここを離れてください! この場所が敵軍に包囲されました!」


俺は、微笑んだ。狩りの時間だ。


第9話 終わり

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