5-6 月護豆知識……?
お久しぶりです。すみません。グダグダです……。
「え~~、何それ? あ、ひょっとして私が精霊魔法使えるから……とか言わないわよね?」
あっけらかんと笑い飛ばした筈のアンリだったが……
「あーもー、そう言えば三英雄の一人は元は月護だったんだっけ……。
おまけに今だって、現役の”去月”がキミの船に居候してたんだよね。
そりゃ、バレちゃうわよね~。
―――そうよ。
私は魔法担当の方のエージェント。今回、解放軍を勝たせる為に、志願兵として潜入したの」
急に脱力すると嫌にあっさりと白状した。
「……か、かなりぶっちゃけたね……」
正直ここまで話してくれるとは思っていなかった。
てか、リョウヤが元月護だって? 初めて聞いたぞ?!
「リョウヤが元忍者ってのは知ってたけど、元月護だったなんて……初耳だ」
「そうなの? ”七鋼”も継承してた、月護の中でも上位クラスだったって聞いてるわよ?
未だに彼の後に"黄鋼"を継げる人材が居なくて休眠中だし……」
「ふぅん……。俺、知ってるようで知らない事ばっかりだなぁ……。
そうだ、リョウヤの言ってた強い人ってのは、もう亡くなってるってお館様が話してくれたな。
同じくらい強い人は、今は任務中だからって去月と手合わせしたんだよ」
「そりゃあそうでしょうよ。去月は現在、名実ともに月護のナンバー2だもの。
魔法だけで言えば、剣の師匠である”雨月”ヤギヌマさんだって超えてるって噂だし」
―――ん? ”雨月”ヤギヌマさん?
「じゃあ”去月”はなんて名前なんだ?」
「あぁ、―――っとと、いけない。本人が言ってないなら、それはお館様からの指令だろうし、私からは言えないわ。
まぁ、でもお察しの通り”去月”は十二月護における役職名よ。
ちなみに、
1月が”初月”、
2月が”雪月”、
3月が”訪月”、
4月が”桜月”、
5月が”翠月”、
6月が”雨月”、
7月が”葉月”、
8月が”炎月”、
9月が”夜月”、
10月が”紅月”、
11月が”霜月”、
12月が”去月”。
忍者の里での古い暦が元になってるの」
「去月の本名は、その内本人に聞いてみるよ。
それからもう一つ。王城にスパイとして潜入してたって言うレナードも忍者なのか?」
あの、宰相を確保しに向かっていた時に相対した忍者装束の男―――。
確かにあの時、彼女は『どうして?』と呟いていたのだから。
「―――知らない。この案件で動いてるのは私だけだと思っていたんだもの……。
でも、私の知らない人だったのよね……。大抵の人は知ってる筈なんだけど。
だけど、あの人―――」
元から怪訝そうだった表情が、更に険しくなる。
「何?」
「上手く言えないんだけど……魔力の流れが普通じゃない感じがしたのよ。
あんなのは、初めて見たわ」
酷く難しい顔をして考え込んでいるアンリに一応聞いてみる。
「で、キミは名前聞いたら教えてくれるのか?」
「え、ああ、そうね。ワタシはカイエ……。カイエ ミカナギって言うのよ。
覚えておいてね、黄金の調停者さん」
そう言って、アンリ改めカイエはにっこり笑った。
* *
最低限の見張りだけ立てて、殆どの連中が寝ていた間にアンリ……じゃなくて、カイエは姿を消した。まぁ、それ以前にもっと謎の奴―――レナードが既に消えていたけど。
王都解放戦から数日、シャトルの発着場まで団長が忙しいだろうに見送りに来てくれた。
「はぁ……。アンリもレナードも水臭ぇなぁ。最後に挨拶くらいしていけってんだよ~」
団長はあれからぼやく事しきりだ。新たな国の仲間として、是非とも手を貸して欲しかったのだろうけど。
「ま、しょうがないよ。居なくなっちゃったんだから。潔く諦めないと」
「他人事みたいに言いやがって。おめぇももう帰っちまうんだろうが」
そんなジト目で見られても……。
「ははは。俺にも仕事があるんでね。貧乏暇なしって奴でさ。ちょっと厄介な仕事が待ってるんだよ。それも、三大賢者サマ絡みのね」
「……へぇ。こりゃまた大きく出たな? 三大賢者ってーと、例のスタンの師匠か?」
「そうそう。なんて言いつつ、俺達の日々の食事の問題でもあるんだけどさ……。
スタンの師匠が絡んだ事で、絶対に失敗出来なくなっちゃって……。
ああ、気が重い―――」
ついでに胃も痛い。穴でも開きそうな気分だ。
思わずしゃがみ込んだ俺の背を、団長がバシバシ叩いてくる。
「はっはっは! 頑張れよ、若人!!
ああ、今度おめぇが来る時には、新しい仲間も連れて来い。前よりも、絶対良い国にしてみせるからな」
「勿論。楽しみにしてるよ」
こうして、俺の短い旅は終わりを迎えた。
さて、これからどうなる事やら。




