5-5 終わりと始まりと
戦争は終わったけど、後に残る物ってお話。……ここでも終わりませんでした。多分、後一話、短く。
レナードは、結構何でもそつなくこなす割に剣の修行は苦手だったのか、たまたま俺の方が筋が良かったのか、一足早く卒業した時に別れて以来会っていない。
「レナードが居たのか?! 懐かしいなぁ、元気にしてたんだな」
「お前が修行終えたすぐ後に、あいつも家の都合とかで騎士団を辞めていてな。
それが、つい三月ほど前にひょっこり顔を見せに来たんだよ。
向こうに顔が割れてないからってんでスパイを頼んじまったが……」
「―――何か問題でも?」
「全然老けてなかったんだよ。まるで修行してた頃そのまんまでな。
まぁ、でも若く見えるヤツなんてのはまま居るもんだが……。
腕が鈍っちゃいねぇかと、若手と手合わせさせたんだ。
その様子を俺も見てたんだが、さっきの黒尽くめ野郎の太刀筋と似てた気がしてな―――」
あのレナードが、もしかして忍者?! ガキの頃のイメージしかない俺には俄に信じられない。
いやまぁ、当時から確かにいろんな事マルチに出来るヤツだな~とは思ってたけど。
考え込んでいる俺に、更におっさんは付け加える。
「スパイとして送り込んだは良いが、正直そんなに期待してた訳じゃない。
大体、今何やってんだと聞いたら、田舎町の酒場のバーテンだなんて言ってたんだから……。
だが、入ってくる報告は的確だわ、殿下と接触して仲良くなっちまうわ、色々とタダ者じゃ済まねぇ感じになっちまってな?」
なんだか話を聞く限り、ホントに忍者なんじゃないかと思えてくる。
戻ったら去月に聞いてみるか? 答えてくれるとは限らないけど。
* *
その夜は、解放軍も王都民も入り交じっての王城解放記念祝勝会と化した。
まぁ、それまでにザネス側の兵士達―――降伏した王都防衛隊の連中とか、城内で軒並み気絶させられてた奴らとかね―――をまとめて捕まえたりとか(後にきちんと裁判を行って罪刑を決めるそうだ)、城の運営スタッフ達の安否確認なんかも手分けして行われた。
殿下付きの侍従達は、幼い彼を守るという使命感があったのだろうか、殆どが残っていたという。
一方で文官、厨房や清掃担当、庭師などといった一般のスタッフでも役職者はなんだかんだと理由を付けて解雇されて入れ替わっていたという。
まぁ、その内の半分くらいは解放軍へ後方支援で参加してくれていたらしい。
「なんて言うか、そうやって人が集まってくれるって良いね。―――人望だな、おっさん」
「はは。まぁ、ありがたい話だよ。見えない所で動いてる、なんてのもあるからなぁ……」
「でもこれから忙しくなるな。国の立て直しかぁ……想像つかないな」
「それに関しちゃ文官達や……連邦の手助けも期待してるんだ。俺達は荒事は得意な方だが、政に関しちゃさっぱりだからなぁ」
ああ、そうか……。この星は銀河連邦によって、文明レベルの制限が掛けられているから―――。
宇宙にはいろんな星があり、そこに住まう知的生命体の文明レベルも千差万別だ。だから、その星の適正レベルが定められ、それを超える技術や物品の持ち込みが厳しく制限を受ける。
曰く、正常な文明の進化を歪めるってのが理由だ。
ちなみにこの星は『中世レベル』。
本来なら俺の銃とかは持ち込み禁止に当たるけれど、冒険者資格一級と特別な許可を受けて漸く持ち込み可能になっている。
そんなだから、宇宙港は衛星軌道上にある銀河連邦管理下の物が一つだけだし、そこから各都市へ定期の小型シャトルが繋がってる。その宇宙港も今回の内戦で長らく閉鎖されていた。
この先、この国がどんな政治を行い、また、銀河連邦がどのような裁定を下すのか……。
正直門外漢の俺には想像も付かない。
けれど、王子殿下や周りに居るおっさんをはじめとした人間達を見る限りでは、良い方向に行きそうだ。
「なぁに~、男同士しんみりしちゃってー!!」
片手に麦芽酒のジョッキ、もう一方には王都の名物料理でもある串焼き肉を持って乱入してきたのはアンリエッタ。
「おいおい、アンリ。酔ってるのか?」
「良いじゃなーい! だって戦争が終わったのよ? こんなに美味しいお酒なんて他にないんだから~」
「それについちゃあ異論はないが……。そりゃそうと、アンリはこれからどうするんだ?
もし良ければこのまま……」
彼女ほどの魔道士ならば、是非とも殿下に仕えて欲しいのだろう。しかし彼女は一転暗い表情で俯いてしまう。
「うーん……ごめんなさい。戦争が終わるまでって約束だから。私はもう帰らないといけない……。
でも、決して貴方達が嫌いって訳じゃないの。むしろ、不謹慎だけど、一緒に戦えてとても楽しかったんだから。
それに、ライトさんとも会えたしね?」
と、最後は明るくウインクしてくれる。
「そうだな。俺も、会えて良かったよ。何より、おっさん達を助けてくれてありがとう。
そりゃそうと、ある意味おっさんは今夜の主役の筈なのに、こんなところで地味に飲んでて良いのか?」
と言うと、昔馴染みのおっさんは何か気付いたように豪快に笑い出した。
「―――ああ~、そうだな! いやいや、悪かった。わっはっは。邪魔者は退散しよう~!」
と、ニヤニヤ笑いながら賑やかな輪の方へと戻っていった。
「ありゃあ、絶対勘違いしてるな……。そんな意味で言ったんじゃないのに。
―――まぁ、いいか。ところでアンリエッタ……」
手を振って団長を見送っていた彼女が振り返る。
「え~? 何、改まって……」
「アンリエッタ・リングストンって偽名だろ? 君も、忍者だったりする?」




