5-3 凄腕の護衛
多分次で今回の話終わります……。と言うか終わらせたい……(ノД`)
「……あんなのがもう一人、ってか? なんか、スゲェな」
「はは、確かに。と言うか……当人が聞いたら激怒されそうだけど、師匠はスタンにさらに輪を掛けた感じだからね」
「………………」
おっさんがげんなりした顔で絶句する。いや、そこまでか? と思わなくもないが。
「それより、こんなにのんびりしてて大丈夫なのか? いくら勝ちが見えてるったって……」
ライトの質問は尤もな物だ。まるでもう戦争が終わったかのような雰囲気さえ感じるほどなのだから。
「いや、まぁ、それもそうなんだがな。それに関しちゃあ、今はちと”待ち”の状態でな。
正直時が満ちるのを待ってる状態だ。
それでも明日中には王都攻略にかかる事には違いはないんだがな」
なんだか歯切れが悪い。
「何だよ? その”待ち”の元凶って?」
幹部達の表情が一様に曇る。
「それがなぁ……、内通者の話によるとザネスには一人、凄腕のボディガードが付いているらしくてな」
ザネス自身、これまで何度も暗殺を企てられてもいるが、その全てがその人物ただ一人に食い止められているという。
「―――また凄いのが居たもんだな」
ライトの頭を過ったのは、言わずもがな。黒ずくめの相棒の姿だったのだが……。
「ただなぁ……その姿を見たヤツが一人も居ねぇんだよ」
「―――は?」
そんな事があり得るのか?
「出来ればそのボディガードの正体なり尻尾なりが掴めてから王都に向かいたかったんだが、そろそろ時間切れ、って所だ。
俺達の目的は王都を解放して終わり、じゃねぇからな。ザネスをとっ捕まえて、幼い王子殿下の無事を確認しなきゃならねぇ……」
そのボディガード、実力的には忍者組織の人間、と言うのが一番しっくりくるが……。
ザネスのような私利私欲にまみれた小悪党を、あの忍者組織が護衛なんぞするだろうか?
「団長―――!!」
そこへ駆け込んできた兵士の知らせによって、現場は一転緊張感に包まれる事となる。
内通者からの火急の連絡で『ザネスの護衛が消えた』と……。
「まずいな……ザネスの野郎がどう出るかが分からん。最悪、ヤツは取り逃がしても何とかなるが、王子殿下の命の保証がない―――」
だが、団長のおっさんが渋く唸ったのも、その時だけだった。
「よし、予定は前倒しだ! 野郎共、王都を奪還しに行くぞ。用意は出来てるだろうな?」
ニヤリと笑うおっさんに、周りの幹部連中は余裕で返す。
「当たり前だ。兵達も皆今か今かと待っておるわ!」
「その号令を待っていたぞ!」
「抜かりはないぞ。漸くこの時が来たんだ。腕が鳴るってもんだ」
―――そして、彼女も。
「フフ、魔法使いに特別な用意なんて特にないわよ?」
その白磁の美貌に浮かぶ、不敵すぎる笑みに
……もしかしてネコ被ってた?
とライトは内心思ったとか。
* *
結局、王都攻略戦では『お前もいた方が皆の士気が上がる』とか何とか理由を付けられて、ライトは城内への突入チームへ組み込まれた。
王城の制圧には出来る限りの時短が求められる為、でもあるから了承し、先行軍が城下での戦闘中に最短で王城へ向かったのだが……。
所々で火の手が上がっている物の、王都守備軍は手薄で、案外あっさりと城門へと辿り着く事が出来た。
城門は大掛かりな跳ね橋になっているが、団長が合図を送ると、手筈が出来ていたらしく重厚な音と主に橋が降りてきた。
「随分手際良いね?」
「内通者が出来の良いヤツでな。後で紹介するよ」
―――しかし。王城に踏み込んでみると、兵士と思われる人間だけが、そこかしこに倒れている。
が、誰も死んではいない。全てが、気絶させられている。
突入チームが狐に摘ままれた気分で玉座の間へと向かう途中だった。
初めて、立っている人影と出くわした。
そしてその姿は、ライトにはもう見慣れた物だった。
黒い、忍び装束。まさか……去月、なのか? ライトが思ったその時、隣に居た彼女もまた、息を飲んでいた。
「どう、して……?」
小さく聞こえた声は、酷く掠れていた。
「―――お前は何者だ? ザネスの護衛、ってヤツか?!」
その人物は問いには答えず。
「元騎士団長グレッグ・ハーガイル……―――お手並み拝見仕る」
正式な騎士団の作法に則った仕草をしてみせる。
「―――これは……我が非礼を詫びさせてくれ。
ディー、それに皆も、手出しするなよ」




