5-2 久しぶりの再会
ううう。注意書き付けられちゃったよ……。うじうじ考えてたって全然上手くいかないから、この話はさっさと終わらせよう……という話。
「へぇ~。『白銀の救世主』かぁ。スゴイ人が居るんだな。
あ、そうだ、おじさん。この辺で酒売ってる店ってないかな?」
無事教えて貰った酒屋で土産も買って、解放軍の拠点になっているという古城へと向かう。
そこは、元々民衆にも好かれていた地方領主の居城だったとの事だが、政変の後、ザネスの送り込んできた新しい行政官とかいう男が元の領主にあらぬ疑いを掛け追放してしまったのだという。
そして新しい行政官は最初こそ友好的だったけれど、すぐに重税を課すようになったそうだ。
この国のあらゆる所で同じような事が起こり、各地で民衆達の怒りが爆発。レジスタンスとして活動を始めていた元騎士団長のおっさんの元へ続々と人が集って来た。
多分、さっきの『白銀の救世主』もそんな中の一人なのだろう。
メールにあったおっさんの説明文だけではどうにも要領を得なかったので、改めて地図アプリを確かめた。まぁ、こういう所の城ってのは、大抵高くなってる場所なんかにあるのが普通だけど、やっぱり例に漏れず小高い山の様な場所にあった。
それにしても……この城、厳ついな。
質実剛健を地で行くような、城だなと言うのが第一印象だった。
決して観光地になるような煌びやかさや優美さは無いけれど、俺には此方の方が好ましい。
門番の兵士に話が通って居たようで、到着してすぐに中へ入れてくれた。
石造りの廊下を進むと、作戦本部として使っているという応接室へと案内される。
応接室と言ってもかなりの広さがある。その一番奥まった所のテーブルに見慣れたおっさんの姿を見つけた。
案内してくれた人に礼を言って、ざわざわしている中へ入っていく。中には俺を見て声を上げた人が居て、おっさんも気付いたらしい。
「……ん? おお! ディー!! 漸く来たか! 遅ぇぞ!!」
良く通る、野太い声が掛かる。懐かしい、でも知っているよりも幾分年を喰った笑顔に、俺もつられて顔がほころぶ。
「これでも最速だっつーの。
―――久し振り、団長のおっさん。相変わらず、元気そうだな」
「ああ。お前もな、ディー。ははは、あの時のチビッコがもうこんなにデカくなってるとはな~。
それに、大層なご活躍じゃないか。―――アイツらも、きっと喜んでるぜ」
「そうかな? ……そうだと良いんだけど。それにしても、街もここもすごい活気だよな。驚いたよ」
「まぁな。残すは王都のみ、だからな。ムードは押せ押せだ。
何せここの所、彼女のお陰で負け知らずってのも大きいんだがな」
と、団長のおっさんの隣に居るのは、さっき市場で見た彼女だ。
「さっき、街で見掛けたよ。『白銀の救世主』って呼ばれてるっておじさんが教えてくれたよ。
初めまして、ライト・エルズワースです。
団長のおっさんからは本名の方でディーって呼ばれてますけどね」
漸く自己紹介が済むと、周りに居た人達がわっと盛り上がった。
曰く、本物だーッ!! って。
いや、まぁ、俺も三英雄に初めて会った時同じ様な事言ったけどさ。俺なんて、まだそこ迄じゃ無いと思うんだけどなぁ……。
騒ぎが一段落した頃、解放軍の首脳メンバーを紹介された。元騎士団だったって言う人が多かったけれど、しっかり民間出の面々も居るし、無実の咎で追われた元地方領主さんも居た。
中でも異色だったのは、やはり彼女だった。
『白銀の救世主』こと、アンリエッタ・リングストンと名乗ったその女性は、市場での表情とは一転、にっこり微笑んで握手してくれた。
「街の市場で軍人崩れに絡まれてた子供、助けてあげたの見てたんだ。
魔法も凄いと思ったんだけど、その前の体術も見事だなぁって。あんな綺麗な捌き、久し振りに見たからさ」
「やだなぁ……見てたのね。あれは、たまたま上手くいっただけなの。あくまで本職は魔法使いなのよ?」
照れ臭いのか赤くなってそう言うけれど。
「いやいや。本人はこう言うが、なかなかどうして。
アンリは体術もかなりの腕だぞ。柔よく剛を制すってヤツだ」
がはは、と団長が太鼓判を押す。団長が言うなら大した物なのだろう。後は……そうだな。
「そういや、魔法ってどんなの使うの?」
「どんなのって?」
「えーと、精霊魔法とか、なんとか?」
「ああ、系統の話ね。私は火霊系精霊魔法と古代語魔法のAランクまで、後は医療呪文を少し」
「うわ、ホント本職だなぁ。スタンも火霊系と古代語魔法は使ってたけど、医療呪文は持ってなかったみたいだし」
というライトの言葉に、はぁ~とため息をついて団長が零した。
「……まぁ、あいつは根っからの”破壊魔”だったしな」
そう言えば、団長も少なからず『被害』に遭っていたのを思い出した。
何だかんだでここに居た間、一日に一つ以上くらいのハイペースで物損被害があったハズ。
「プッ……確かに。ぶっ壊すの専門だったもんな。後で修理するのは、いつもリョウヤで。
毎度ブツブツ文句言いながらも律儀に直してたっけ」
何だか懐かしい。それに、いやにすんなり話せる。共通の思い出だからだろうか?
「スタンさんってあの”獄炎の魔道士”でしょ?
流石に私、あのレベルにはまだまだなのよね……。目指してはいるんだけど」
ちょっと拗ねたような表情になるアンリ。
「……うーん。スタンってそんなに凄かったのか。俺、魔法はてんでからっきしだから何かイマイチ実感湧かないんだよなぁ……」
「そうか、確かお前は抗魔体質でもないのに魔法が使えないと言ってたな。だったら分かり難いかもなぁ……。
だがあの力は恐るべき力だぞ? 初めて会った時も、騎士団が苦戦していた中型モンスターの大群をあっという間に消し炭にしちまったしな」
「ああ、その話聞いた事あるよ。それに、火霊系魔法の恐ろしさは、ついこの間も実感したんだよな~」
「なんだなんだ。アイツ程の使い手なんてそうそう居ないだろうが?」
「それが、スタンの師匠と仕事先でばったり会っちゃってさ」
その言葉に、ぎょっとしたように目を剥いたのはアンリだった。
「えぇっ?! スタンさんの師匠って、エリザベス・ラ・ダルブーシェ師?!
何処?! 何処で会ったの???
あの方って超有名な引きこもり……じゃない、インドア派なのに!」
「入植調査も済んでないようなとある星の遺跡でね。
ミイラの群に襲われたのを、助けて貰った、んだけど……なんか、あの弟子にしてあの師匠有りって感じで……初めてあった気がしなかったなぁ」




