4-8 なんだかんだで良い案かも
これで魔女さんもファミリー……なのか? という話。
「ユイリが居てくれて助かったね。ちょっと手伝ってくれるかい?」
「え、はい。ボクに出来る事でしたら何なりと―――?」
魔女はその返事に頷くと、ライトに首だけ向けて聞いてくる。
「アンタの船、今どこに有るんだい?」
「え、ティンカーフィッシュならガンフの爺さんの工房に置いてきましたけど……」
と、何気なく言ってから、ライトはもの凄くヤバい事を知らせてしまったのかも知れないと自覚した。と言うのも……
「そーかそーか、あのジジイんトコか。じゃあ、あのドックだな……」
これぞ悪巧み極まれり、な顔で魔女は嗤っているのだから。
「あ、あの~、一体何しようって思ってます?」
「何って、アンタの船にすぐ行けるようにしとこうと思ってね。
美味い食事の時にはちゃんと一声掛けるんだよ?」
は? えーと―――???
「じゃー、ユイリ。亜空間通路を繋いで固定するから手伝っておくれ。
ああ、そうそう英雄クン!」
「はい?」
「アンタの船の食堂? みたいなトコに何も無い壁、あるだろ? そこをイメージしておくれ」
「えぇ~、って、繋ぐって……このドアでですか?!」
「そ。その方がわざわざクルー登録なんてしなくて済むだろ?
食事の度にいちいち跳ぶのも面倒だし、こっちで研究も続けたいしね」
うわー。それっておいしいとこ取りってヤツなんじゃ……。
とは言え、ライトにとっても利が無い訳でもない。魔法関連で困った事があれば、何だかんだでこの気の良い? 魔女は助けてくれるだろう。
それに、毎回誰かにエレベーターで下まで迎えに来て貰わなくても良くなるし?
意外と良い案なのかも知れない。
……船に残っているシェーラやアイシャに説明しなきゃならない事や、大前提として去月に食事の
依頼をしなくちゃいけない件やら色々クリアしなければならない事は多々あるが……。
あーもー、なるようになれ、だ!!
えーとえーとえーと、何もない壁の所、は―――。
ホームである船の一角を思い浮かべる。
「ん、よし。場所は理解した。良いかい、ユイリ、始めるよ」
「了解です。―――座標サーチ開始します」
それは、ほんの2,3分の出来事だった。
精々最後に、ドアがぱぁっと眩しい程の光を一瞬放ったくらいで。
「―――はい、終了~♪ もう、繋がったよ、英雄クン」
正直な所、ライトにはあっけないくらいにあっさり終わってしまった。
「もう、終わり? なんですか??? って、ホントに???」
「なんだい? この三大賢者が一人、黒装の魔女の手腕を疑ってるのかい?
まぁ、今回はユイリが居てくれたからかなり時間も短縮出来たけどね。
じゃぁ、確認しようか。本当に連結出来てるかどうか」
と、自信たっぷりに魔女は、突貫工事? で付けたとは思えない程重厚な木製のドアを開けてみせる。
カチャ、キィィ―――。
見た目同様上等の音を立てて、扉は開く。
丁度”向こう”に居たシェーラとアイシャの二人と目が合った。その顔は、まさしく驚愕! と
いった様子で。
「え、ええええええ―――?!」
「ら、ライトぉ―――?!」
まぁ、当然の反応だよな……と思いつつ「ただいま」と言ってから何だか随分間抜けてるなーと
反省する。
「アレ、魔女さん??? 何でぇ……? ―――あああッ!!」
アイシャがユイリを見つけて指を指す。
「あ、この間はどうもお世話になりました。ありがとうございました」
ぺこりと頭を下げられて、アイシャが酷くばつが悪い顔になる。
「あ、その……えっと、コチラコソ」
返事も何ともぎこちなくなる。
「ああ、久し振りだな、ポンコツ遺跡荒らしのお嬢ちゃん。元気にしているか?」
全く、この魔女は何か毒を混ぜないと喋れないのだろうか……とライトは呆れる。
案の定、アイシャの顔はピクピク引き攣りまくっていて、漫画的表現の怒りマークが見えるようだ。
「―――えーっと、一体何がどうなってるの???」
一人だけ魔女とユイリを知らないシェーラが取り残されている。
「ああ、まずは紹介しなきゃな。こちらはかの宇宙三大賢者のお一人、”黒装の魔女”こと、エリザベス・ラ・ダルブーシェ師。
で、こちらは去月の同僚でこの間の仕事で随分助けて貰ったユイリさん」
ライトの紹介に魔女は嗤い、ユイリは会釈する。
「え、去月の同僚って、忍者?! 忍者って男だけじゃないの?!」
去月のイメージが強すぎるのだろうか、アイシャがもの凄く意外そうだ。
「確かに実務……戦闘担当は今でも男性の方が多いんですけど、他の部署では女性も多いんですよ」
「ユイリは術や魔法の担当だが、戦闘も十分こなすぞ? そこいら辺の並のファイターなら二、三人くらい朝飯前だろ?」
と何故か勝ち誇った様な魔女の言葉に、当の彼女は
「―――エリザベス様……勘弁して下さい……」
と溜息を付いた。




