4-1 仮申請
と、取り敢えず、繋ぎだけ書けました……という話。
アイシャが紆余曲折? の末、このティンカーフィッシュ号に乗り込む事になったので、早速クルー登録をしようと言う話になった。
連邦の個別登録ページで予備審査用のフォームに、彼女自身にデータを入力させ……ようとしたのだが、ライトにとって大誤算だったのは、意外にもアイシャがコンピュータに思いっきり疎い事だった。
「うわ、アイシャもか。こりゃ特訓するしかないか……」
「えええ―――ッ??!! つ、使えないとダメ???」
「そりゃ、シェーラと二人で船に残った時、どっちも使えないのは困る。俺か去月が居りゃ良いけど、四六時中居る訳じゃないからな」
「あうう……。成るべく早く覚える……。正直、私だって使えた方が楽だし」
背に腹は代えられないのか、アイシャも素直に同意した。まぁ、今時、使えない方が珍しい……というか、今まで良く何とかなってたなってレベルだ。
で、そんな事も有りつつも、平穏な昼下がり―――。ライトはおやっさんこと、ウォルフ・クォラルドから直接連絡を貰った。
「おい、ライト。また仲間が増えるんだってな?」
と。
「うーん、耳が早いなぁ。登録申請出したの昨日だぜ?」
全く、一体どこから情報を仕入れているんだか。確かこのおっさんは銀河連邦警察の結構上層部に居るハズなのに。
「はっはっは。俺の地獄耳を甘く見るなよ~。
ああ、いやそんな事よりもだ。手始めに妖精、お次はなんと忍者! ってのも充分驚いたが、今回の新入りも違う意味で、まぁ、ビックリしたんだよ」
「ん? 何か問題でもあった?」
妙に回りくどい言い方をする。この男にしては、珍しい。
「問題って言うか、な……。お前自身には関わりはないのかも知れないんだが―――」
* *
「分かった。成る程ね。まぁ、気を付けてはおくよ。
所でさ、宇宙三大賢者の一人、エリザベス・ラ・ダルブーシェ師の住んでる所って何処か分かるかな?」
何の気なしに聞いただけ、だったのだが。
「ん? ダルブーシェ師……? って、『黒装の魔女』かッ?!」
おやっさんが突然大きな声を上げる。
「え、ああ、そうそう。その『黒装の魔女』さん。
この間知り合いになったんだけど、ちょっと会いに行く用事が……って、おやっさん???」
見ればウォルフは、これ以上無いと言う程に顔を引きつらせて、椅子の背いっぱいまで身体を引いていた。
「悪い事は言わん。あの最凶魔女とは関わり合いになるのは止めておけ……。
その方が、絶対にお前の為だから! いや、マジで!!!」
巷ではロマンスグレーとも称される、なかなかのイケオジでもあるウォルフが、一目で幻滅しそうな醜態を晒している。
「……あんたとダルブーシェ師との間で一体何があったんだよ……?」
流石にこの状態では魔女の住処など教えてはくれないだろう。
仕方なく、ライトは挨拶だけ済ませて通信を切った。
「あー、どうしようかな。今、去月居ないしな~。
とは言え、いつまでもこんな物持ってる訳にもいかないし……」
ライトの手にあるのは、元”犠牲の心血”。大きさこそ、ニワトリのタマゴ程もあろうかという大きなルビーだが、もうあの何処か蠱惑に満ちた輝きは永遠に失われてしまった。
まぁ、そのお陰で死なずに済んだというのもあるのだが。
「命を懸けてでも叶えたい望み、か」
あの時、フレッドにきっぱりないとは言ったけれど。三英雄達ですら倒せなかった、『邪悪なる精神生命体』―――。本当に、自分が倒せるのだろうか。元、高位の魔術師だったと言われているヤツに。それを考えると、また迷いが頭を擡げる。
リリアにも迷わずに真っ直ぐ進めと、言われているのに。
「はぁ……。道は険しいなぁ」
モヤモヤしたまま、通信室から戻るとシェーラとアイシャがリビング? に居た。
何だかんだで、仲良いのかも知れないなぁ。種族は違うけど、女の子(?)同士だし。
「あれ、ライト。ウォルフさん何て?」
「ん? ああ。また仲間が増えたのかってさ。おやっさん、ああ見えてヒマなのかな」
「おやっさん? って誰?」
その辺の事情が分からないアイシャが聞いてくる。
「おやっさん、ことウォルフ・クォラルド。銀河連邦警察のそこそこお偉いさんさ」
と説明してやると、ゲッという顔になる。
「ももも、もしかして、あたし、この船、乗れないとか……?」
犯罪履歴のデータも既に確認済みだ。
「いや。……まぁ、あれくらいの微罪で、犯した時期も随分昔だから、申請は通るとは思うけどね。
―――でも、この船に乗ったからには微罪ですら認めないからな。それだけは、覚えとけよ?」
「うッ……はぃ……。了解でありますぅぅぅ……」
「まぁ、申請の結果が届くには早くても一週間は掛かるだろうから、先にアイシャのエアーピット、ガンフのジジイんトコに持って行ってみるか?」
「えッ?! な、治るの、あたしのエアピちゃん?」
それまでとは一転、急に元気になった。現金だなぁ……。
「そればっかりは分からない。あそこまで見事にぶっ壊れてるの俺も初めて見たし。だから、ダメ元だぞ?」
しゅーーーーん。と書き文字がついていそうな程のしおれ具合だ。
「それで、申請結果が届いたら、次は環境適応検査……要するに、宇宙に出ても大丈夫かって簡単な身体検査だから、そっちは特に問題ないだろう。その検査結果が届いたら、アイシャも晴れて正式なクルーだよ」
「よっしゃ~! やったね♪」
「おいおい、喜ぶのが早いだろ。まだ申請結果も来てないってのに」
やれやれ、先が思いやられるよ。




