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treasure seeker  作者: 草葉 影野
《過去編》04 遠き日の面影見ゆる時のまにまに
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《過去編》 4-8 能力者の血族 スタン その3

今日のお葬式だけは嬉しいの、という話。

―――この後カイエは03の話でリョウヤにブチ切れて、食って掛かります。

……時間経過が行ったり来たりで分かり辛くて申し訳無い。

08.能力者の血族 シュターニスラウス・オーベルシュタイン その3


 なっ! 何だってぇッ?! 契約もしないで精霊魔法を使える人間がいるなんて、そんなモンが存在してたまるか!!


「そんなバカな!! そんなことあり得ない!!」

「だって、ホントだもん。

 カイリは契約してないけど私以上に器用に魔法使うもの。なんでなのかなぁ?」


『なんでなのかなぁ?』なんて、次元の話じゃねぇって!


「術龍だって、あの子3歳くらいで継承してすぐに使えるようになっちゃったし。

 私なんて、つい最近やっと継承の予備儀式始めたのに」


 じゅつりゅう? そういや何かさっき見せて貰ったな? 精霊関係だったんで軽く流しちまったんだが……。

 忍者組織に伝わる、古代の罪の遺産―――『術刀(じゅつとう)』と呼ばれる、莫大な精霊力を凝縮した武器、だったかな?


 そいつは7振あって、『七鋼(ななはがね)』とか『虹鋼(にじはがね)』とかいうらしい。

 というのも、各々の刀の刀身には色がついている所から由来しているのだと白衣着たオッサンが蘊蓄(うんちく)をたれていたっけ。

 んで、その術刀に宿る……つーか、変化っつーかまぁそんなもんが居て、そいつが龍の姿をしているんだと。彼女が言ってるのはその龍の事なのだろう。

 そうだよなぁ。こんな子供が刃物(しかも長物)を振り回してるなんて、絵的に大間違いだもんなぁ。

 ………しかしだ。

 アレは……かなり厳重な防護ケースに収まっているのを見たが、そこから零れ出てる力だけで既に桁外れに甚大だった。

 あんなモノを、3歳で使いこなしただぁ?! この子の弟ってヤツはどんなバケモノなんだ。

 将来、ここのエージェントになるのだろうが……死んでも敵には回したくねぇ。絶対に。

 ―――宇宙は広いぜ。人工的とは言えこんなお子さま達が存在するなんてよ。

 ん、待てよ?


「……確か、さっき……ママはここの一番の術者だって言ってたよな?」

「うん」

「そしたら、ママは中御門(なかみかど)の一番偉い人なのか?」


 中御門家っていうのは、特殊能力者の巣窟である忍者一党の中にあって、殊更に魔法全般において秀でた能力者を輩出している由緒正しき家なのだ。

 魔法を操る人間で、世間のウラをも知る立場にあるなら必ず名前を知っているという超絶有名人だ。

 彼女たちは(……あ、中御門は女流家系で子供は女しか生まれない)精霊魔法以外にも、忍者の間では術魔法と呼ばれるている現象精霊魔法(光や闇、音などを操る魔法)や、呪符魔法といって、事前に魔力を込めた『符』と呼ばれる媒介を扱う魔法を使うことが出来る、いわば魔法のエキスパートの家系だ。

 その家の今の当主は確か入り婿を貰っていて、娘がもう8つ位だという噂を聞いてる。

 それに……中御門に男が生まれたなんて話は一度たりとも聞いたことがない。


「……私たちのママは中御門のトモエおばさまの妹。私たちが生まれた時に死んじゃったんだ……」


 少女の声のトーンがすっかり下がってしまった。恐らく自分たちのせいで死んだのだと責任を感じているのだろう。


「お父さんも中御門の人だって言ってたっけ? でも、中御門に男が生まれたって話は聞いた事ないけどな……」

「ううん、確かに中御門の男よ。生まれてすぐに里子に出されたんだって。

 だからほら、私たちナカミカド姓じゃないもの」


 ああ、そうか。彼女さっきカイエ・ミカナギって名乗ってたっけ。


「だけど、私……ミカナギって名字大嫌い!」

「どうしてだよ?」

「だって、大ッ嫌いなあの男の名字だもん。そりゃ血は繋がってるかも知れないけど……あんな男、父親でも何でもない!」


 母親の時とは一転、冷たい怒りが彼女の語調を頑なにさせている。

 どんな経緯があったのかは知らないが、彼女は酷く父親を憎んでいるのが分かる。

 しかし……『父親』は彼女たちに取っては、唯一の家族であり、頼れる人間ではないのだろうか?


「どうして、そんなにお父さん嫌いなんだ? まぁ、オレ様も親父って奴は嫌いだったけどな」

「……だって、あの男は……私たちがママを殺したって……私たちを生んだから死んだんだって……。それに………」


 固く握りしめられた拳がわなわなと震えている。


「ママに似てるって……家にいるカイリを……弟を殴ったり蹴ったり……虐待(ぎゃくたい)してたのよ。

 たまに会ってもあの子、いつも長袖に長ズボン着てた……。

 私に怪我や青痣だらけの身体を見せないように……って。

 だから私、全然気が付かなかった……あの子、何にも言わないから……。

 私たちが一体何したのよ? 好きでこんな所に……あの男の子供に生まれてきたんじゃないのに!?」


 ぽろぽろぽろぽろ、大粒の涙がこぼれ落ちる。悲しいのではない。悔しい……口惜しいのだ。

 ……子供は、生まれる場所を選べない。だからこそ、大人が……親が護ってやらなきゃなんねー筈だ。

 オレ様が言うのも恐ろしく場違いな気がするが、この子を見てると強くそう思う。ま、おキレイな理想論を吐ける程、オレ様自身は出来た人間じゃあ無いんだが。

 人は、『親』で有る以前に『性別』を……と言うより『肉』を捨てられないのか……。

 何にせよ、子供に愛を注げない様な親は憎まれても仕方がねーな。


「……悪ィ……泣かせちまったな」


 うーむ、バツが悪い事この上ない。


「……ううん……ごめんなさい」


 幾ら大人びていたって、この子はまだたった7つの幼い女の子なんだ。

 オレ様の不躾な質問は、いかばかりか彼女の心を傷つけたのか。

 その時、遠くで鐘の音が聞こえた。里全体に響き渡る、時報の鐘だった。


「あ、いっけない! カクヤを迎えに行かなくっちゃっ」

「……? 何かあんのか?」

「あの男が行方不明になって2年が経つの。だから、戸籍上死亡扱いになるからお葬式やるんだって!」


 2年、か。一般人なら2年くらい消息不明でも平気で生きているかも知れないが、こと忍者に限ってはそうはいかない。

 忍者には特殊な追跡システムがあって、行方を断った者をほぼ100%の確率で発見するらしい。

 たとえ、その人物が朽ち果てて白骨になって居ようとも。

 しかし、それでも発見できずに2年が経過した場合に死亡と見なすそうだ。


 その、追跡システムの根拠がイマイチよく分からないが、リョウヤからちらっと聞いた話じゃ、どうも遺伝子レベルでの認識システムらしいんだな。

 だから、これでも見つからないとなると本当に細胞単位以下で分解されている事を意味するのだという。

 その上での、2年だ。生きてる望みなんて、万分の一もありゃしねぇよな。


 余談だが、そーゆーシステムらしいんで、忍者組織がリョウヤの居所を調べようと思えば何処にいようと一分もしない内に分かるだろうって、リョウヤ本人が笑って言っていた。


 そう。

 ヤツは笑っていたが、実際、忍者組織はオレ様達の居所を常に把握してやがるんじゃねーかって勘ぐっている。

 ……でなければ、確たる事前連絡も無しに警戒空域へ侵入したオレ様達が今こうして五体満足で居られる訳がねぇ。最悪なら、問答無用で船ごと攻撃・爆破されていただろう。それくらい、侵入者には厳しい対応をする組織だ。

 だが今回は、いやにすんなり事が運ぶ。いや、運びすぎる。


 昔ここにいたリョウヤには悪いけどよ、アイツが思っている程この組織は優しくもなければ、穏健でもなく、お人好しでもない。アイツは、中に居たからこそ比較的良い部分だけしか知らない。見えていないウラの場所でカイエのような人道に背く行為も平気で遂行している。『闇の調停者』という大義名分の影で……。けっ、胸クソ悪ぃぜっ。

 おっとっと、何かトリップしちまった。


「葬式、か。あんま気分いいもんじゃねぇな」


 オレ様がそう言うと、カイエは行きかけていた足取りを止め、振り返った。


「そうね……でも、私、今日のお葬式だけは嬉しいの。だって、あの男のお葬式だもん!」


 やれやれ。満面の笑顔だよ。


「じゃあまたね、スタン、バイバイ!!」


 そのカイエの顔が、初めて子供らしい笑顔だったから、すっげー心が痛んだけど、内心、ホッとした。あんな子供らしい顔も出来んじゃねーか! ってな。


「ああ、バイバイ。……またな、カイエ」


 オレ様も手を振ってやる。子供っぽい事やってんなぁなんて思いながら。

 少女の姿が見えなくなった頃、当初の目的……少し遅めの昼飯を食う為に食堂へと歩き出した。

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