《過去編》 4-1 出逢い ディー その1
ライトが子供時代の、まだ宇宙に出てそんなに経っていない頃の話。
01、出逢い ディライヴ・エルズワース その1
その日は、何だか朝からドキドキしてた。前の夜、知らない場所で泊まったってのもあったかも知れない。いつもならまだまだ寝てる時間に目が覚めた。それにしても、ここってどんな所なんだろう? 不思議なトコロだよなぁ。
変わった感じの建物とか、自然がいっぱいなトコ。他の星とは全然違う。すっげー美味しい空気、柔らかいお日様の光。
でもリョウヤが言うには、ここは人工の星なんだって言ってた。
「……信じらんないや」
でも、リョウヤがそんな事で嘘付く訳ないしなぁ。
あ、リョウヤっていうのは俺を引き取ってくれた保護者の一人。みんなから『三英雄』なんて呼ばれてる、超有名人なんだ。リョウヤはその三英雄のリーダーで、格闘技の達人! おまけに剣だって使えてすっげー強いんだ。
―――って、あれ、何だったっけ……?
あ、そうそう! 建物の感じが違うのはさっきも言ったけど、服とかも全然違う。
ええと、「キモノ」っていったっけ? あと、寝る時もベッドじゃないんだ。
「フトン」っていって、ちょっと重いけどふかふかして暖かかったな。
ご飯も美味しいし、ケッコー良いトコ。
……なんだけど、なんか、その、人が少ないんだ。居るのはヤローのオトナばっか。
どういうトコなのか、よく分かんねーや。
で、俺がここに連れてこられたのは、検査をするんだって言ってた。でも検査ってなんなんだ?
宇宙へ出る前にも「健康診断」っていうのをしたのになぁ。ま、でもその検査ってやつは今日の昼からだって話だったから、昼までは遊んでてもいいんだよな。
昨日教えて貰った通路を通って、草原へ出た。晴れた空には白い雲が浮かんでて、ちょっと冷たい朝の風がさわさわと草を揺らせてる。
気持ち良い……。
寝そべって目を閉じる。
………。
すぐ側にごく微かな気配を感じて、俺は起き上がった。
そこには、一人の子供が立ってた。男かな、女かな?
ぱっと見じゃ解らない、すっごくキレイな子だ。ビックリしたように、俺のコト見てる。
「……キミ、誰? どこの人?」
「俺? 俺は、ええと……ずっと遠くから来たんだ。
どこの人ってのはよく分かんねーや。ずっと旅してるから」
俺がそう言うと、その子はやっと『ビックリ』の顔から戻る。
「そう、じゃあ、検査を受ける為に外から来た人だね」
「うん、そう言われてる。でも俺、前にも検査したんだけどなぁ」
「きっと大した検査じゃないよ。半日もあれば終わるんじゃないかな」
その子は、とっても不思議だった。
何つーか、さっき吹いてた風みたいな感じ。
「そっか。ならまぁ、いいや。
あ、俺、ディライヴ・エルズワース。みんなは“ディー”って呼ぶけど、お前は?」
「ボクは……カイリ。」
カイリは、ちょっと恥ずかしそうに名前を教えてくれた。
「カイリ……カイリか。なぁ、カイリはここの子なんだろ?」
頷いた。なんか、ホッとした~。ここにいる「子供」って俺だけじゃなかったんだー。
「ここって、どういうトコなんだ? 全然、子供とか見ないしさ」
「……特別な所だから、ここは。他の場所には子供も沢山いるけど。
今、ここにいる『子供』はボクと、キミだけじゃないかな」
「うう~ん、だからオトナばっかなんだ」
つい最近まで子供ばっかりの所に居たんだもんな。
まだちょっと、『オトナばっかり』ってのに慣れてないんだよな~。
「なぁ、カイリ、もし良かったらいっしょに遊ぼうぜ!」
「……え?!」
きょとんとした顔でカイリが聞き返してくる。
「ダメか?」
「ええと……ダメじゃ、ないけど……」
「俺、ここのこと、よくわかんねーしさ。昼まで一緒に居てよ」
起きたらいきなりリョウヤに『大人しくしてろ』って言われて、部屋に置いて行かれちまったから、どうして良いか解らなくて困ってたんだよな。
言われた通りに大人しく待ってりゃいいんだろうけど、そんなの俺の性に合わないし。
「……良いけど。ボクなんかで良いの?」
「全然っ! 良かった~!!」
ホントのこと言うと、ちょっとだけ心細かったんだ。ほんの、ちょびっとだけだけど。
喜び方が大げさすぎかな? カイリが笑ってる。
……ドキ。
……カ、カワイイ………。ヤバイ、ヤバイぞッ。ちょ、ちょっと待て!!!
カイリ、自分のこと『ボク』って言ってるから男だよな?
「どうかしたの?」
「え、ああ、その……何でもないっ!」
と、そこへタイミング良く……いや、悪くだな。
ぐぅぅぅぅ~~~~~。なんて、腹の虫が大きな声で鳴いたんだ。
ぐわぁぁぁっ! なんて間抜けなんだっ!! めちゃくちゃ恥ずかしいーーー!!!
カイリは笑いたいのをガマンしてるのが丸分かりの顔してるっ。
「朝ご飯、まだなんでしょ? ボクもまだだから、一緒に食べに行こ!」
俺に手を差し出して微笑んだカイリは、キラキラ光る朝日に透けてとても、キレイだった。
手を取って立ち上がると、カイリは手を繋いだまま歩き出す。
草原から建物内に戻って、入り組んだ通路をすいすい歩いていく。
「なぁ、カイリ。」
「なぁに?」
「カイリは、ずっとここにいるのか?」
何となく、気になったから聞いてみた。こんなオトナばっかりの所に、ずうっといるのかなって。
「……うん、そうだね。赤ちゃんの頃から、ここにいるよ」
……あ、うわ、まずったっ。俺、何気なく聞いただけだったのに、カイリの顔が見るからに曇っちまってる。
「ゴ、ゴメン!!」
「どうしてディーが謝るの?」
「え、あ、その、アハハ……」
笑って誤魔化そうとしたけど、ダメだった。
「……仕方ないんだ。ボクはここじゃないと、生きていけないから」
寂しそうな笑顔。身体が弱いのかな? 何となく思って、何となく納得しちまった。
だって、カイリの持つ雰囲気はとても“儚い”から。




